「捕手・阿部」がもたらした巨人の黄金期 一塁コンバートで球界は転換期へ?
「捕手・阿部」と比べて限界がある「一塁手・阿部」の影響力
今回のコンバートは、守備負担の軽減により安定的な試合出場や打撃復調を期待して実施するものだろう。しかし、仮に阿部が全盛期に近い打撃を取り戻しても「一塁手・阿部」がつくりだせる優位性は「捕手・阿部」には及ばないと予想される。
捕手とは異なり一塁手は平均的に高い打撃成績を残す選手の多いポジションだ。いくら阿部の打撃力が優れていても、競争相手が一塁手だと大きな差をつくるのは難しい。全盛期レベルの打撃を見せても、つくりだせる差は捕手だった期間の通常のシーズンと同等だ。
巨人は約10年にわたり、NPB史上でも屈指の強打の捕手がラインナップに並ぶ前提でチームを編成できた。阿部のコンバートはそれができなくなることを意味する。巨人は得点にして年間40~50点のリードが期待できる常勝チームから、普通のチームに戻ることになる。
ペナントレースは、ゲームバランスを狂わせてきた存在の影響力が小さくなることで接戦化する可能性が高い。これまでならカバーできた編成上の小さなミスも、成績に響くようになるだろう。
“阿部による支配”と言ってよい時代が終わる。次にゲームバランスにインパクトを与える選手が出てくるのか。出てくるのであればどのチームに登場するのか。2015年は、いろいろな場面で「捕手・阿部」の影響力がすさまじかったことを感じさせるシーズンになるかもしれない。
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DELTA・岡田友輔・秋山健一郎●文 text by DELTA OKADA,Y. AKIYAMA,K.
DELTA プロフィール
DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート3』が4月5日に発売。