野球への変わらぬ熱量が伝わってくる2014年シーズンのイチロー語録
「僕の中では一番意識する人ですから。僕にとっては大きな数字」
4月13日のレッドソックス戦では、4回から途中出場。本拠地のファンから大歓声で迎えられると、1点リードで迎えた8回1死の場面でデビッド・オルティスの右中間への大飛球をスーパーキャッチ。再び大歓声を浴びた。限定的な出場が続く中で、グラウンドに現れただけで歓声を浴びたことに、さすがのイチローも胸を熱くしたという。
「それはねぇ、ちょっとジーンとねぇ。僕の気持ちもさすがに動くというか、そういう気持ちにはなりました。(ファンの雰囲気に)委ねたというか、それがあっての(ファインプレー)ですね」
4月24日のレッドソックス戦は、7回表までに10点差を付けられる大味なゲームに。レッドソックスは9回のマウンドに野手のマイク・カープを送り込んだ。もう1人回ればイチローの打席というところで試合は終了。対戦は実現しなかった。
「いや、もう(対戦は)絶対嫌だった。嫌ですよー、そんなん。野手は誰だって嫌です。悪いイメージしか残らないからね」
そして、「野手対野手の方が打ちやすそうだが?」と聞かれると、こう返した。
「それはもう凡人の考え方です」
5月13日のメッツ戦では、松坂大輔投手が途中登板して、3回2/3を1安打1失点の好投で今季初勝利を挙げた。イチロー自身は故障で大事を取って欠場していたが、固い絆で結ばれる後輩の姿に、熱い言葉を並べた。
「僕にとって大輔が背負っているものはなんか人と違うものがある。常に自分だけではない何かをあいつは背負っているでしょ。今日、僕は出てないんだけど、応援したいと言えばちょっと変な言い方というか、おかしいんだけど、一緒に頑張りたいというか、そういう気持ちが今、特にする。なかなか同志という存在っていうのはいないんだけど、大輔はそういう意味で唯一かもしれないね。僕にとってはね」
開幕からアルフォンソ・ソリアーノの調子が上がらなかったこともあり、7月に入ってからは、レギュラーポジションを奪取。出番が少ない中で準備を怠らず、打撃、守備、走塁とすべての面で結果を残してきたことが実った。ただ、本人に慢心は一切なかった。前半戦最終戦の7月13日のオリオールズ戦で「試合を重ねるごとにポジションを奪ったという感覚か?」と聞かれ、こう総括している。
「そんな風には僕には見えないけどね。そうだったら、どんな時だってライトにいるでしょ。左ピッチャーの時だっているでしょ。実際にどういう理由でそこにいるか僕には分からないけども、僕自身がそう思うべきではないと思う」
7月25日のブルージェイズ戦では、今季唯一のホームランとなる劇的な逆転3ランを放った。さすがのイチローも上機嫌で振り返った。打った瞬間の感覚もコミカルに表現している。
「いやぁ、ゼロでなくて良かったという感じです。(打った瞬間は)どうかなぁ。イッテー!という感じ。そこはカタカナですから」
8月9日のインディアンス戦ではメジャー通算2811本目の安打を放ち、ジョージ・シスラーを超えた。2004年には同選手の持つ年間安打記録も更新しており、通算安打でも記録を上回った試合後に特別な感情を明かした。
「僕の中では一番意識する人ですから。僕にとっては大きな数字ですよね。(その上には)他に誰がいるか詳しく僕は知らないですが、名前が出てくるのは、ストーリーがあるのはシスラーしかいないですから」
8月24日のホワイトソックス戦では、クリス・セールから逆転の2点タイムリーを放った。リーグ最強左腕から左打者が打点を挙げたのは、約1年ぶり。「それはすごいよねぇ。そんなことあるんだねぇ」と感心した後、変則的な投球フォームのセールが「メジャーでも最も角度を使って投げてくるか?」と聞かれ、冗談交じりに笑いながら話した。
「それは多分、アルゼンチンのサッカーファンが見ても分かるんじゃないっすか」