守備で減らした失点は21年間で243点 球史に刻まれるべき名手、金子誠

遊撃手では金子の打撃に一定の価値

 このような観点で浮かび上がるのが、今季をもってファイターズ一筋、21年の現役生活を終えた金子誠の働きだ。

 2014年の遊撃手のリプレイスメント・レベルは、パ・リーグで出塁率.273、長打率.294、セ・リーグでそれぞれ.291と.321と概算される(注1)。金子の通算成績は出塁率.307、長打率.350。少なくとも遊撃手としての打撃ではチームに損失をもたらすレベルではなかったことがうかがえる。

 ファイターズが北海道移転後初優勝した06年などは、金子は打率.254、出塁率.300、長打率.382だった。リプレイスメント・レベルに対しても大きな差をつけるものではないが、出場を重ね126試合、439打席に立った結果、シーズン終了時には得点換算で9.19点分リプレイスメント・レベルを上回っていた。金子に「守備の名手だが貧打」のイメージがあったのは事実だが、ポジションを考慮すると彼の打撃は決してお荷物ではなく、チームに利益をもたらしていたと言える。

 ただし、その打撃スタイルは本塁打・四死球が少なく三振も多くはない、要するにどんどん振っていくBABIP (Batting Average on Balls In Play:放ったインプレー打球がアウトにならなかった割合)の影響が極めて強く出るタイプの打者で、リプレイスメント・レベルに多く存在するタイプの打者でもある。

 このタイプの打者は年度ごとの打撃成績に大きな波が出ることが多く、過大評価と過小評価の間を振り幅大きく往復する例が多い。金子もこの傾向から逃れられず、極端な低出塁率からレギュラーポジションを失いかけたシーズンもあれば、打率3割をマークした上に7試合連続二塁打のNPB記録をマークし、月間MVPを獲得したシーズンもあった。

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