日本プロ野球史上9人目の偉業なるか 今季大躍進の柳田悠岐が見据える進化
メジャーにも衝撃を与えた26歳は成長途上
緊張した様子だった。幾分、いや、かなり硬かった。11月26日、都内のホテルで行われた「NPB AWARDS 2014」。ソフトバンクの柳田悠岐は、パ・リーグのベストナインの大トリで、受賞コメントを求められた。
「素晴らしい外野手のいるパ・リーグで、このような賞をいただいて光栄です。今年は日本一で終われて幸せな1年でした。来年もリーグ優勝、日本一になれるように頑張りたいと思います」
文句なしの、初のベストナイン受賞だった。今季は全144試合に出場し、リーグ3位の打率3割1分7厘をマーク。15本塁打、打点70はキャリアハイ。33盗塁はリーグ2位で、91得点はリーグトップ。この数字だけでも、どれだけ背番号44がリーグV、日本一に貢献したかが分かる。
それ以上に、柳田本人が驚いたことがある。
「え? マジっすか? 凄いですね。うれしいです」
オリックス金子827点、柳田349点、日本ハム大谷291点。以下、五十嵐、糸井、サファテ、内川と続く。これは、パ・リーグ最優秀選手賞の最終投票結果だ。何と柳田はMVPを獲得した金子に次ぐ、2位に入っていたのだった。
それだけ今季の背番号44の働きは衝撃だった。シーズンの成績は前述の通りだが、自身初出場となったオールスター第2戦では、6打数4安打1本塁打2打点でMVPを獲得。日本シリーズでは20打数8安打、打率4割、出塁率4割5分5厘は両チームのスタメン選手でトップで5得点も両球団でトップ。全5戦で安打を放ち、2、3、5戦目は決勝点のホームを踏んで、シリーズ優秀選手になった。
さらに、初めて侍ジャパンに選ばれて挑んだ日米野球でも大会MVPを獲得。沖縄での親善試合を除く5試合で、20打数6安打で打率3割、4打点。第2戦で4打数3安打4打点と大暴れすると、第4戦でも4打数3安打と活躍した。第2戦では、右翼のドジャース・プイグが本塁打と思いこみ、一歩も動かないほどの強烈な打球を放った(結果はフェンス直撃の二塁打)。
MLB選抜を率いたレッドソックスのファレル監督は「柳田はバットスイングが速く、打席では常にアグレッシブだった」と驚きを隠さなかった。マリナーズの岩隈も「彼が1番打者として、あれだけのスイングができるという思い切りの良さが素晴らしい」と評価し、メジャースカウト陣も柳田への関心を隠さなかったという。