DeNA・梶谷隆幸のコンバートを検証する ショートからライトへのポジションチェンジは成功だったのか

梶谷のコンバートを総合的に評価すると?

 以上をもって、コンバートによる出場機会増と守備面での貢献は、梶谷をより価値のある選手に押し上げたと判断したい。

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コンバート前後の成績を比較する

 梶谷の価値をリプレイスメント・レベル(注3)を基準に比較すると、2013年は打撃で大きな貢献があったが、守備でのマイナスがそれを半減させていた。さらにその守備がネックとなり出場機会が限定されたことなどで、攻守合わせて創出した得点価値は26.1点に留まった。

 今シーズンはコンバートにより、守備でのマイナスを大きく改善。攻撃の貢献は伸びず、1打席当たりの貢献は小さくなったものの、600打席を超える出場があったため、結果的な積み上げは大きくなり、攻守合わせて創出した得点価値は39.1点に伸びた。これらの数字は、ショートで低く、外野で高いリプレイスメント・レベルの違いも考慮したものである。

 タイミング的にポジションに適応する時間がほとんどかからない「良い時期の良い決断」だったことも補足しておきたい。コンバート1年目から守備で良い数字を出せるとは限らず、適応にかかる期間を価値がマイナスになっても出場させるケースもあるからだ。

 梶谷はまだ十分に若く、来季以降に打撃が再び上向けば、さらに価値を大きくする可能性も秘めている。DeNAが今後のチーム強化を進める上で、ポイントになる施策だったと言えるだろう。

(注1)weighted On-Base Averageの略。長打を打つ能力、出塁する能力を総合的に評価しそれを得点の形に換算。さらに打席数で割るなどして1打席当たりの得点創出力を捉えられるようにした指標。

(注2)Batting Average on Balls In Playの略。ホームランを除くフェアグラウンドに飛んだ打球がアウトにならなかった割合。打球がヒットになりがちだったか、アウトになりがちだったかなどがつかめる指標。

(注3)どのチームであってもいつでも補填できる、代替可能な控え戦力のレベル。このレベルをどれだけ上回っているかを基準に選手を評価すると、選手の価値をより実態に近い形で割り出せる。なおDELTAでは平均的な成績の88%程度を記録できる選手と想定している。

【参考】守備で減らした失点は21年間で243点 球史に刻まれるべき名手、金子誠
https://full-count.jp/2014/11/26/post6574/

【了】

DELTA・岡田友輔・秋山健一郎●文  text by DELTA OKADA,Y. AKIYAMA,K.

DELTA プロフィール

DELTA  http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート3』が4月5日に発売。

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