個人目標を掲げるようになった大谷翔平 何が20歳の若者を変えたのか

大谷の視野は確実に広がった

 そんな思いを胸に秘めて挑んだ日米野球。そのマウンドに立った意義は大きかった。第1戦では3番手登板し、1回を3者凡退のパーフェク投球。直球最速は159キロを計測した。最終第5戦では先発し、4回2失点と好投。直球最速は160キロの大台に達し、毎回の7奪三振と持ち味も発揮した。カーブにフォークにスライダー。持ち球もすべて使った。いや、試したというべきだろう。

 MLBオールスターを率いたファレル監督も「すばらしいピッチャー。優れたピッチャー。強い印象を受けた」と舌を巻いた。大会後、大谷はメジャー挑戦に向け、現時点での思いを語った。「まだまだ手のとどかない存在。1つ1つ積み重ねていく」。だが、「甘い球やカウントを取りに行った気のない球は確実に捉えられる」と身をもって思い知らされ、「力を入れた時に抑えることができた」と自信も深めた。

 遠い存在には違いないのかもしれない。ただ、メジャーのマウンドはもう夢ではない。そこに立つことが目標でもない。その場で世界の強打者たちをねじ伏せ、勝ち続ける。それが近い将来に実現可能で、達成しなければいけないノルマになった。

 レンジャーズのダルビッシュ有はプロ野球で7年間を過ごし、海を渡った。ヤンキースの田中将大も同じ年数だけ、日本でプレーした。広島の前田健太は今オフのメジャー移籍が濃厚と目されていたが、ここに来て残留報道が多くを占める。

「木を見て森を見ず」という諺がある。プロで2年を過ごし、メジャーリーガーとの対戦で、自身の今を確認できた。大谷の視野は確実に広がった。そして、これから成し遂げていかなければいけないことも頭と体で理解している。だからこそ今、力強く、そして自身の言葉で数字を語ることができる。木も見て森も見る――。大谷から、まだまだ目が離せない。

【了】

J・T●文 text by J・T

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