新天地での貢献度は? “国内組助っ人”のシャッフルがもたらすインパクト
ブランコの不安要素と予想される貢献度
ただし、オリックスがペーニャとの再契約を断念した後に獲得したのが、よく似た成績を残しているブランコだったことを考えると、ペーニャの打撃に大きな不満があったというよりは、一部で報道されているように契約内容など別の理由があったと考えるのが妥当だろう。
オリックスが契約したブランコは3選手の中では最長の6年間日本でプレーし通算ISO(注2)が.253とパワーを発揮してきた。
懸念されるのはケガの多さで、シーズン通してプレーできなかった年が今年を含め3年もある。さらに今シーズンのISOは.209と来日以来最悪で、本塁打数を打席数で割ったHR%が5.1%、三振を打席数で割ったK%が27.3%といずれも6年間で2番目に悪い数字だった。本塁打の出やすい横浜スタジアムから京セラドームに本拠地が移ることなどもあり、長打力が目減りすることは予想される。
だが、ペーニャの穴をどの程度埋められるかは、タイプが似ているだけに予想がつきやすそうだ。
ブランコとペーニャについては、ジョーンズを放出した楽天が獲得に動いていると報道されてきた。ブランコはオリックス入りが決まり、ペーニャについても続報はなく実現するかどうかは不透明だが、ジョーンズのような出塁力に寄った貢献を見せる打者を、ブランコやペーニャのような長打力に寄った貢献を見せる打者に置き換えた場合、どんな効果があるかは少しつかみにくい。
そのようなときに便利なのが、それぞれの選手の働きを得点換算する方法だ。様々な計算方法があるが、基本は図のような考え方でおこなわれる。走者を前に押し出す力と、アウトにならず攻撃を継続する力の兼ね合いが、得点力として発揮されるというものだ。
野球において打者は、チャンスメーカーとポイントゲッター、どちらかしか担ってはいけないというルールはない。ペーニャは90打点を挙げる一方で、197回出塁(=アウトにならず攻撃を継続)し自らの本塁打以外で36回ホームインした。ジョーンズも71打点を挙げ、229回出塁し自らの本塁打以外で45回ホームインしている。
つまり両者の移籍によって動くのは、90打点、71打点などの数字に表れる殊勲打を放つ力だけではなく、それに加え197回、229回のアウトにならず攻撃を継続する力と、そこから生まれた得点という考え方ができる。
こうした働きを総合的に得点換算すると、2014年のペーニャとジョーンズは、ベクトルは違えど、どちらもだいたい70~80点程度の働きが見込める選手だったと概算される(注3)。つまり、ペーニャとジョーンズを入れ替えても、両者が同じ程度の働きを来年も見せるのであれば、発揮できる得点力は大きくは変わらないと考えられるのである。
もちろんこれはベースの部分で、新チームの他の打者の出塁力、長打力の特性や環境変化、経年変化などが、実際に記録される得点数に影響するのは間違いない。ただベースが同じである以上、チームの得点力を劇的に変化させる活躍は望みにくいというのが実際のところだろう。
(注1)On-base Plus Sluggingの略。出塁率と長打率の値を足した簡易的に打者の総合力を計るための指標。
(注2)Isolated Powerの略。長打率は単打を放った回数も評価に含んでいるので、そこから打率を引き、純粋な長打を打つ能力を計る能力を抽出した指標。2014年の平均はセが.127、パが.122。500打席以上の打者のトップは、セがエルドレッド(広島)で.284、パがペーニャで.231。
(注3)これはweighted Runs Created(wRC)という指標を用いた概算。どの指標を用いるかで数値は変わってくるが、両選手の間にそこまで大きな差は出ない。
【了】
DELTA・水島仁・秋山健一郎●文 text by DELTA MIZUSHIMA,J. AKIYAMA,K.
DELTA プロフィール
DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート3』が4月5日に発売。