黒田博樹の“男気伝説” 広島復帰を決断した右腕が米国でも見せた心意気

ライナーに右手を出して負傷も「手を出さなかったら僕ではない」

 ただ、実際のプレーは、その言葉とは正反対だ。黒田がライナーから逃げることはない。それどころから、闘志むきだしで立ち向かっていく。

 ヤンキース移籍2年目の2013年4月3日、自身のシーズン初登板は本拠地でのレッドソックス戦だった。2回。ビクトリノの打球が黒田めがけて飛んでいった。黒田は頭部などに当たるのを避けながら、センターへと抜けるライナーに利き腕である右手を出してしまい、中指を打撲。ここで降板することになった。

 ただ、その後にこう話している。

「難しいところですね。ピッチャーとしては(手を出して怪我をするのは)ダメなんですけど、あそこで(ヒットを防ぐために)手を出さなかったら僕ではないというところもある」

 チームに勝利をもたらせるなら、自分が怪我をしてもいい。マウンドに上がれば、恐怖よりも気迫が勝る。

 同じ2013年には、5勝目を挙げた5月12日のロイヤルズ戦でも気迫のこもったピッチングを見せた。このときは、普段は冷静沈着な男が、ある審判の一言で感情をあらわにした。8回途中6安打2失点でマウンドを降りる際、審判から注意を受けると、詰め寄ろうとしたのだ。

 その直前に1球だけ、黒田がストライクと信じた球がボールと判定され、信じられないという表情を浮かべて、凍り付いていた。気持ちを切り替えて投げ続けたが、フリーズしたことに対し、審判が降板時に注意してきた。これに怒りを爆発させた。

 「“その1球だけだろ”みたいなことを言われるとね」。暗に誤審を認めるような審判の許せない一言に黒田のスイッチが入った。

「その1球を投げるためにたくさんの調整をして、いろんなデータを取り、投げている。それを軽く言われるのはちょっと納得がいかなかった」

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