霞みがちだった「メリット」が明確に 黒田の日本復帰がもたらすもの

ネガティブな要素が何一つない黒田の日本球界復帰

 その差を誰よりも強く肌で感じているのは、プレーしている選手自身だ。毎日プレーしながらグラウンドで感じたこと、クラブハウス内で感じたこと、日米のチーム構成の違いなど、彼らの経験が日本球界に還元されることは、今後海外に活躍の場を求める選手に限らず、日本球界にいながら国際大会を戦う選手にとって貴重な情報源となる。

 アメリカをはじめ、海外で経験を積んだ選手の日本復帰は、ネガティブな印象が先行してしまうため、日本球界にとって、こういった大きなメリットがもたらされる事実が霞みがちになってしまう。

 だが、来季もメジャーでプレーすれば、確実に年俸1000万ドル(約12億円)以上の契約が結べる状況があった黒田の場合は、ネガティブな要素は何一つない。メジャーからのオファーを投げ打って年俸4億円で古巣へ戻ることには黒田自身にとってさまざまな意味があるだろうが、その中でも恩返しや、自らの経験の還元といった意味合いは大きいだろうし、経験を持ち帰るといったメリットが大きくクローズアップされる機会も増えるはずだ。加えて、海外から日本へ戻る選手に対するネガティブなイメージが和らぐきっかけにもなるだろう。

 今後は、メジャーをはじめ海外経験者が指導者になったり、フロントオフィス入りしたりするケースが増えてくるはずだ。彼らが持ち帰ってきた財産=経験を広く受け入れ、消化し、血肉とできた時、日本の野球はまた一回り大きなものに成長するのかもしれない。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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