黒田博樹は再び日本で輝けるか “再適応”を可能にする39歳の向上心
昨季もヤンキースでさらなる進化を追い求めた
昨年の春季キャンプで、黒田はカットボールの再習得に取り組んだ。ドジャース時代には投げていたが、投球フォームを改良する中で「安定しなくなった」と封印していた球種だった。再習得の理由を、本人はこう明かしていた。
「(使うのは)やっぱり左(に対して)ですね。特にヤンキースタジアムなので、左が1番重要になってくる。ここ2年間ずっとそう感じていましたし、特にそういうボールが必要じゃないかなと思います。外だけだとどうしてもミートされて、というのがあるので、幅広くと、あとバッターの居心地を良くさせないためにも、ですね」
打者天国の「ヒッターズパーク」と呼ばれるヤンキースタジアムは、特に右翼から右中間が狭いため、左打者に圧倒的に有利とされている。得意とするシンカーとは逆の変化で左打者の内角へ食い込むカットボールを使い、攻め方のパターンを広げたい――。進化を求め、39歳にして再習得に取り組んだ。
さらに、キャンプ中に実戦形式の投球練習に登板した際には、前年まであまり使うことのなかった左打者の膝元に落ちるスライダーを多投した。新加入だったブライアン・マッキャン捕手のアドバイスをすぐに取り入れたという。
ブレーブス時代、マッキャンは黒田の最大の武器である内角低めへのシンカーを苦手にしていた。ボールゾーンからストライクゾーンに入ってくる「フロントドア」で、あらゆる打者から見逃し三振を奪ってきたが、これと逆の変化をするボールがあれば、もっと打者は苦しくなると伝えられたという。こういった意見を素直に、どん欲に聞くことができるのも、ベテラン右腕の強さと言える。
昨季、ヤンキースには同じア・リーグ東地区のレッドソックスにいたジャコビー・エルズベリー、オリオールズにいたブライアン・ロバーツも加入したが、この2人にも対戦した中で感じていたことを積極的に聞いたという。
「今年はたまたま同じ東地区で対戦していた選手が多く入ってきた。そういう選手から話を聞くのは参考になる」
黒田はキャンプ中に、こう明かしていた。