黒田博樹は再び日本で輝けるか “再適応”を可能にする39歳の向上心

黒田だからこそ、NPBに“再適応”できる

 また、学ぶことがあれば、後輩からでも貪欲に吸収する。これだけの実績を誇りながら、プライドが成長を邪魔するようなことはない。これも黒田の人間性と言えるだろう。メジャーで対戦相手に年下の日本人選手がいた時は、試合前の練習中に雑談に花を咲かせ、そこで変化球の握りを教えてもらう光景も度々見られた。

 2013年の5月には、ヤンキースタジアムでのマリナーズ戦で岩隈久志投手が先発したが、ここでも黒田らしさを見せていた。当時、自身は絶好調で、防御率は2点台前半をキープするなど、ア・リーグの上位に名を連ねていた。そして、岩隈も同じように開幕から安定感抜群の投球を続けていた。

 7歳年下の右腕の先発前日、黒田はこんな話をしていた。

「自分に絶対にプラスになることがあると思いますし、彼のピッチングを見て自分にプラスになることを探せればいいなと思います。持っている球種は似ていると思いますし、すごく参考になる」

 絶好調であることへの慢心は、全くなかった。実際に、翌日にはヤンキースのダッグアウトから岩隈の投球を食い入るように見つめた。広島では、黒田から何かを吸収したいと考える若手が多いだろう。ただ、黒田自身も、エースの前田だけでなく2年目の大瀬良大地らからでも、何かを学ぼうとするだろう。

 もちろん、不安もある。メジャーで実績を残したからといって、日本でさらに素晴らしい結果が残るかは分からない。ただ、黒田だからこそ、たゆまぬ努力でNPBに“再適応”できるはず。そう思わせるだけの濃密な過去がある。過度な期待は禁物かもしれないが、8年ぶりとなる日本でのピッチングが楽しみでならない。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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