「ファイアーセール」がお家芸? イチローが契約合意したマーリンズとは
世界一は6年周期、2003年から12年後の今年はイチロー加入で躍進も?
ベケットは23歳でワールドシリーズMVPに。主力選手が若く、ここから常勝軍団になるかと思いきや、またも球団は有望株を売りに出してコスト削減を繰り返した。31本塁打を放った主軸のデレク・リーは翌年にカブスへ移籍。ベケットも2005年オフに球団の財政難でレッドソックスへ、カブレラも2007年オフにタイガースへ移籍した。マーリンズは年俸総額削減をするチームという印象になっていった。
2012年には、交通アクセスのよくない上に雨天中止が多かったドルフィン・スタジアムから、開閉式の屋根を備えた新設のマーリンズ・パークに本拠地を移し、これを機にマイアミ・マーリンズに改名した。ホワイトソックスで監督をつとめたオジー・ギーエン監督を招き、メジャー屈指のリードオフマンのホセ・レイエス内野手、好投手のマーク・バーリー、剛腕カルロス・ザンブラーノら大物を獲得。メモリアルイヤーを飾ろうとするも、地区最下位と惨敗に終わった。
そして、そのオフにはまたも「ファイアーセール」を敢行。獲得したばかりのバーリー、レイエスや、生え抜きのジョシュ・ジョンソン投手など主力5選手をブルージェイズにトレードで放出した。これには地元からも反発が起こり、現チームの主砲であるジャンカルロ・スタントン外野手らも不信感を持ったとされる。これに選手会が危機感を覚え、異例の警告を出すほど、たびたび経営が問題視される球団である。
現在、マーリンズの会長を務めるのは美術商だったジェフリー・ローリア氏だが、評判はよくない。1999年にモントリオール・エクスポズのオーナーとなり、2002年にはエクスポズ売却益などでマーリンズを買収。しかし、収益を選手年俸などの強化費に回さずに私腹を肥やしたとの指摘もあった。
今オフ、スタントンと北米プロスポーツ史上最高額の長期契約を結んだ時も、スタントンが6年後に契約破棄できる権利を持つことから、ローリア会長が全額を支払う必要がないとの発言をしていたことが暴露され、地元紙に批判的に報じられた。
ただ、1997年、2003年と世界一になるなど、マーリンズは6年ごとに強さを発揮。2009年はポストシーズンに出ていないが、「6年周期で何かがあるのでは?」との憶測も飛んでいる。今年は2度目の世界一から12年が経過した年でもあり、躍進が期待されている。実際に、今オフの効果的な補強からESPNは「今季飛躍する球団」の5位にマーリンズを選出している。昨季は77勝85敗のリーグ4位に終わったが、イチローは浮上のキーマンとなれるか。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count