オリックス大補強の舞台裏 改革を託された男の哲学(上)

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ドラフトとストーブリーグで理想の補強を実現させたオリックス

 今オフのストーブリーグの主役は間違いなくオリックスだろう。

 米球界から3年ぶりの復帰となる中島裕之内野手に日本ハムからFAで加入する小谷野栄一内野手。さらに2009年の本塁打王、トニ・ブランコ内野手、広島の4年間で40勝を挙げたブライアン・バリントン投手を補強した。FA宣言し、一時はポスティングでのメジャー移籍も視野に入れたエース金子千尋投手も最終的に残留を決めている。

 また、その直前のドラフトでも思惑通りの補強を実現。187センチの大型左腕・山﨑福也の単独1位指名に成功し、2位にはギニア人の父と日本人の母を持つ宗佑磨内野手(横浜隼人)、3位には佐野皓大投手(大分)と将来性豊かな高校生を指名した。その他、4位髙木伴(NTT東日本)、6位坂寄晴一(JR東日本)ら即戦力投手も獲得。9人のうち6人が投手で、12球団屈指の投手陣がさらに強化された。

 2015年シーズンに大きな期待が持てるチーム編成となったオリックス。これら一連の補強を手掛けた人物がいる。球団本部副本部長兼編成部長の加藤康幸氏(48)だ。

 同氏は98年から04年までダイエー(現ソフトバンク)で王貞治監督の監督付を務め、06年にナイキジャパンに転職。12年からは楽天の編成育成本部長、その後チーム統括本部長に就任し、13年の日本一達成に貢献した。そして13年のオフに楽天を退団後、翌14年1月にオリックスに入団。長らくBクラスに低迷していたチームの改革を任されることになった。

「ホントに運が良かったですよね」

 14年のドラフトについて、加藤氏は開口一番そう口にした。

「プロスカウトから来ている情報を基にして、9人中、何人を投手にして、何人を野手にして、何人が即戦で、何人が将来性重視で、という構想はもともとあったんですよ。それがピンポイントで全部獲れましたからね」

 スカウト陣が集う編成室には壁一面に12球団の選手情報が貼り付けられている。各球団の一軍、二軍のデプスチャートがあり、その中の1つには自軍の3年後を見据えたものも作成されている。だが、その将来の布陣を見た時、エースと言える存在がいなかったという。

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