イチローとマーリンズの契約交渉の裏側 「電話会議」と「特別な4番目」
「我々はイチローと何度も電話で話した。彼からのすべての質問に答えた」
イチローと契約を結ぶためにマーリンズが見せた誠意。それは、実際にユニホームに袖を通した場合、どのような状況でプレーすることになるかを明確に示しておくこと。強化責任者のヒル氏やジェニングスGMだけでなく、実際に指揮を執るマイク・レドモンド監督からも直接、説明する機会を設けていた。
メジャーでは、実績のあるベテラン野手に対してはスタメン起用などを前日のうちに告げておく指揮官も多い。だが、昨年まで所属したヤンキースでは、当日に球場入りし、クラブハウスに張り出されているスターティングラインナップの紙を見るまで、イチロー本人も試合に出場するか分からなかった。結果として、自分が本当にチームから必要とされているかを感じられなかったのかもしれない。
「球団のやたらに熱い思いが伝わってきて、この思いに応えたいという気持ちが、昨日、実際に顔を合わせて(球団幹部と)話をして大きく湧いてきました。僕がこの2年間、欲してたものはこれだったんじゃないかなと思います。選手として必要としてもらえること。これが僕にとっては何よりも大切なもので、大きな原動力になるというふうに思います」
イチロー自身も入団会見で偽らざる気持ちを明かしている。マーリンズは球団幹部だけでなくレドモンド監督も交渉の席につき、どれだけイチローが必要かを訴えた。そして、起用法も含めて丁寧に説明を行うことで、1つ1つ疑問を解消していった。
ヒル氏は「我々はイチローと何度も電話で話したよ。契約合意に至る前に何度も話している。彼には我々に対して居心地の良さを感じてもらいたかった。そして、彼からのすべての質問に答えたよ。マイアミは日本から遠い。我々の現状に満足してもらいたかった。どれだけ我々がイチローにチームの一員になってもらいたいかを、彼は知ることができたんじゃないかな」と明かす。第4の外野手であっても、打席数は多くなる。「出場機会の確保」を望むイチローが、納得できるような起用法を考えている。そんな説明があったようだ。