【小島啓民の目】着実に進む野球界への「科学」導入 有効か否かは使い方次第?

同じ打率3割でも高校とプロ野球では意味が違う

 さらに「打率が何割何分」などのように統計学がスポーツに導入され、ジュニア期でも統計を駆使して戦術を組み立てるというような風潮が多くなっています。

 確かに統計は、ある意味起こりうる事象を予測する上では大いに参考になる部分もあります。打率3割でも、高校生の3割と年間100試合以上を戦うプロ選手の3割では意味が全く違います。甲子園に出場する選手にも見られます。地区大会で打率5割の選手に「5割打者がいる。凄い打者だ」と賞賛の言葉で持てはやされるケースが多くあります。

 5割はそう簡単に打てるわけではありませんが、10打数5安打は、長く野球を続けていれば、1回くらいそういう期間も起こりえます。特に、対戦する投手の質によっては大きく変わります。

 一方、400打席以上立つプロ選手においては、400打数120安打という記録は、かなり凄い記録となります。そう考えると、イチロー選手の3年目、1994年546打数210安打 打率3割8分5厘という記録はとんでもない記録であることがお分かいただけるかと思います。

 というように統計学では、試技が多くなればなるほどデータの信憑性が高くなりますが、逆に試技が少ないケースでは、そのデータが必然か、偶然かという判断が必要となります。科学は、駆使した方が良いに決まっていますが、使い手が上手く使わないと良からぬ方向に向かうことも知っておく必要があります。

【了】

小島啓民●文 text by Hirotami Kojima

小島啓民 プロフィール

1964年3月3日生まれ。長崎県出身。長崎県立諫早高で三塁手として甲子園に出場。早大に進学し、社会人野球の名門・三菱重工長崎でプレー。1991年、都市対抗野球では4番打者として準優勝に貢献し、久慈賞受賞、社会人野球ベストナインに。1992年バルセロナ五輪に出場し、銅メダルを獲得。1995年~2000年まで三菱重工長崎で監督。1999年の都市対抗野球では準優勝。日本代表チームのコーチも歴任。2000年から1年間、JOC在外研修員としてサンディエゴパドレス1Aコーチとして、コーチングを学ぶ。2010年広州アジア大会では監督で銅メダル、2013年東アジア大会では金メダル。侍ジャパンの台湾遠征時もバルセロナ五輪でチームメートだった小久保監督をヘッドコーチとして支えた。2014年韓国で開催されたアジア大会でも2大会連続で銅メダル。プロ・アマ混成の第1回21Uワールドカップでも侍ジャパンのヘッドコーチで準優勝。公式ブログ「BASEBALL PLUS(http://baseballplus.blogspot.jp/)」も野球関係者の間では人気となっている。

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