【小島啓民の目】日本に衝撃を与えたリナレスの捕球動作 世界各国で異なる野球の「基本」
基本技術の“知ったかぶり“はいけない、探求心を持つことの重要性
転がったボールを「上から押しつぶすように捕るのか」「手のひらをボールに向けて捕るのか」と言ったことです。正直、どっちでもいいのではと思いましたが、よりリスクが少ないやり方を追求している証しであることは間違いありません。
アメリカはマニュアル社会でありますが、このように少しずつ、基本と呼ばれるものが日本とは違います。メジャーでプレーする日本の選手がてこずっているのは、基本のズレが独自のプレーに影響し、何となく思い通りにならなず、順応に時間がかかっているのが要因の一つとなっていることも考えられます。
そのように海外の野球を見ると今、指導されている基本技術は正しいのかなと思ってしまいますし、昨年まで色々な大会の現場に居合わせても、いまだにたくさんのプレーに驚かされます。
勿論、日本の指導は合理的、さらに献身的であり、世界一であると個人的には思っています。しかし、技術に絶対ということはなく、今教わっている基本が本当に正しいのかという目で練習に取り組めば、野球を深く理解することに繋がりますし、上達への早道となると考えています。
教える側も今の技術指導に常に疑問を持ち、更に追求し、進歩することを求められますが、指導を受ける選手も「なぜ脇を閉めるのか」など常に探究心を持って技術習得に臨んで欲しいものです。
いい選手は、人のプレーを一生懸命、観ているものです。基本の知ったかぶりはいけない。突き詰めないといけないと感じました。
【了】
小島啓民●文 text by Hirotami Kojima
小島啓民 プロフィール
1964年3月3日生まれ。長崎県出身。長崎県立諫早高で三塁手として甲子園に出場。早大に進学し、社会人野球の名門・三菱重工長崎でプレー。1991年、都市対抗野球では4番打者として準優勝に貢献し、久慈賞受賞、社会人野球ベストナインに。1992年バルセロナ五輪に出場し、銅メダルを獲得。1995年~2000年まで三菱重工長崎で監督。1999年の都市対抗野球では準優勝。日本代表チームのコーチも歴任。2000年から1年間、JOC在外研修員としてサンディエゴパドレス1Aコーチとして、コーチングを学ぶ。2010年広州アジア大会では監督で銅メダル、2013年東アジア大会では金メダル。侍ジャパンの台湾遠征時もバルセロナ五輪でチームメートだった小久保監督をヘッドコーチとして支えた。2014年韓国で開催されたアジア大会でも2大会連続で銅メダル。プロ・アマ混成の第1回21Uワールドカップでも侍ジャパンのヘッドコーチで準優勝。公式ブログ「BASEBALL PLUS(http://baseballplus.blogspot.jp/)」も野球関係者の間では人気となっている。