試合中に“別人”に生まれ変わる大谷翔平 今季の快進撃を支える球種とは
「大型エンジン」積む大谷、投手コーチ「運転するのは難しい」
今季はこれまで4度、先発マウンドに登った。計28回2/3を投げ、失点はわずかに3。3月27日の開幕戦・楽天戦では2回に1点を献上。4月4日のオリックス戦では初回に2点を失った。同12日のソフトバンク戦では7回を無失点に封じたが、初回に無死満塁のピンチを迎えている。今季初完封を飾った同19日の楽天戦でも一回に二死一、三塁と苦しんだ。
だが、修正後の大谷はまるで別人。3回以降、失点したケースは皆無。自身も試合後、「変化球を交ぜて直球も良くなった」と頻繁に口にする。
厚沢投手コーチは独特な表現で、こう言う。
「積んでいるエンジンが違う。130キロ台の直球と150キロ、160キロの直球はあきらかに違う。車だってそう。猛スピードで走れば、車体はブレて、運転するのは難しいでしょ」
160キロを超える剛速球。時に140キロ台後半でストンと消え落ちるフォークも投げる。握りを変え、曲がりが大きくなった高速スライダーも相手バッターにとっては厄介だ。すでに日本球界屈指の右腕と呼んでもいい地位にまで登り詰めた若武者だが、忘れてはいけない。まだ20歳。投手としても野手としても発展途上にある。それこそが最大の魅力でもある。
自らの車体を自由自在に操ることのできる運転技術が備わったならば、修正球としてのカーブは必要なくなる。スタートからゴールまでトップギアで完走することができる。まさに向かうところ敵なしだ。若き豪腕は試行錯誤を繰り返しながら、大エースへの道を着実に力強く歩んでいる。
【了】
J・T●文 text by J・T