【小島啓民の目】「遠慮」は技術向上の妨げに ホークスの注目株・牧原にあった積極性
王、広岡両氏の貴重なアドバイス、勝負の世界において「遠慮」や「恥ずかしさ」は禁物
スポーツの世界、勝負の世界においては、「遠慮」や「恥ずかしさ」は禁物です。「一期一会」という言葉も、ぴったりと当てはまる世界です。例えば、一生に一度会えるか会えないかという指導者に対して、恥ずかしさから「質問したい。指導を受けたいのだが」と遠慮をしてしまうケースはよく目にします。一生に1回しかないチャンスと思えば、恥ずかしがっている場合ではないですよね。
私が出場したバルセロナオリンピックの代表合宿に、王貞治さんと広岡達朗さんのお二方が一日限りで指導にお越しくださったことがありました。当時27歳の私でしたが、王さんには、スイングチェックを志願し、広岡さんにはキャッチボールの基本を質問しました。質問の内容は、基本も基本、という内容でしたが当時一番心に引っかかっていた部分でもありました。
王さんからは「素振りの時に力を抜くな、120%の力で振るんだ」とスイングを実際に見て頂きながら色々なアドバイスを頂きました。広岡さんからは、キャッチボールがきちんと指導できる人は少ないと前置きがあった上で、ボールの投げ方を徹底的に指導して頂きました。この瞬間は、野球人として至極の時でありました。
その教えは、私の指導者人生にも大きな影響を与えていることは間違いありません。
21歳以下代表チームの話に戻りますが、主将を務めたソフトバンクホークスの牧原選手が「バッティング、どうですか?」と大会が何日か過ぎたあたりに唐突に質問してきました。その瞬間、私が得体の知れないアマチュアの指導者ということで、「どう接していいか」とプロ選手なりに考えていたのではと思いました。
その一方、非常に勇気ある行動だと心の中で称賛しました。