一軍目指すDeNA三浦大輔が胸中激白 「思い描いたような状況になってきた」

残り少ない同級生、ガッツ、松中には負けられない

――他のチームでもアラフォー選手が増えていますが、同じアラフォーで気になる選手は?

「選手寿命が延びているってのもあるしね。気になる選手は……、同級生かな。中日の小笠原とかソフトバンクの松中とかね。もう日本球界で3人になったから。ガッツ(小笠原)も頑張っているからね。代打率すごいしね。何年か前まではレギュラーで出ていた選手なのに今は代打っていう役割があってそこで活躍できている。だから俺も、投げる場面とか状況が違うけど。でもその役割があるからユニフォームを着ているわけで。そこで頑張るしかないでしょ」

――アラフォーも心が折れる瞬間ってあると思うけど……。

「俺かてそうやで。先発ローテーションで開幕から入りたいっていう気持ちはもちろんもっているし、でも世の中さ、思い通りにいかないことの方が多いじゃん。どんなことでも。じゃ思い通りにいかなかったら、投げ出すのかっていったらそんなことはしないでしょ。でもちょっとした喜びがあるから頑張れるんじゃん。一軍に上がって勝てば、今のこんな苦労なんて吹き飛んでしまうわ。去年もシーズン前半思い通りにいかなくて腐って投げ出していたらあの後半はなかったと思うし。あの喜びがあるから我慢できることってあると思うしがんばろうって思う。

 そんなもんじゃん、人生って。野球だけじゃなくて会社だってさ、毎日電車に乗って会社に行って仕事をして、怒られたり、成績が悪いとか、不景気で大変でしょ。でもちょっとした喜びがあれば、がんばれるんじゃないのかなって。あきらめたら終わりやと思ってるし。辞めるのなんて簡単だよ。『辞めます』って言えばいいんだし。でもせっかくここまできたんだし、できるまでとことんやるよ」

――目指せ、山本昌選手ですね?

「それよく言われるけどさ、昌さんが平均じゃないし、特別だよ。もちろん昌さん、工藤さん(現ソフトバンクホークス監督)たちが40歳過ぎてからの道を広げていってくれて、レールを伸ばしていってくれたっていうことはありがたいことだし、後輩としては励みになるからね。で、この道を俺らがまた太くできればいいかなってのはあるけど。

 24年やる秘訣とかよく聞かれるんだけど、俺がプロ入った時には24年やるつもりで練習してきたことってないしさ。いつも今年どうしようか。良かった。悪かった。じゃ来年どうすればいいかって考えながらやってきたから、積み重ねかな。階段で言えば、目の前の一段を上って。だからその一段の高さしかわからない。一段の高さしかわからなくてのぼって、ちょっと休憩して後ろを見たら、“え、俺こんなにのぼってきてんの? こんなに高いところまできてるの?”って感覚かな。最初から、この24年目の上まで見て上がってきたら、しんどいなぁ……、ってやる前に思っちゃったかもしれない」

――それは今も変わらない?

「今も、目の前の一段をのぼることしか考えていないから。そんなんね、例えば昌さんの50歳を目指すとしたら、あと8年か……、長いなと思うし。今は43歳を目指して今の42歳の1年を頑張ろうって。プロ野球は華やかな世界だけど、嫌なこともあるで。打たれたら悔しいしヤジられるし。そういう商売だからしょうがないけど。練習だってしんどいよ。だってやりたくないもん。昔から言ってるけど、練習、大っ嫌いだもん。やりたくないもん。でもやんなきゃ勝てないから、勝ちたかったらやるしかない。1勝の喜びのために大嫌いな練習も我慢してやります。

 ほかの社会も一緒じゃないかなぁ。仕事ってやってて何か楽しいことがあるから続けていられるわけで。何か楽しいことがあるはず。それを見つけて、頑張ってほしいなって思うし。仕事終わって飲むでもいいし。嫌なことがあったら飲んで忘れて休んで、また気持ち新たに始める、とかね。だって嫌なことがない人生なんてないと思うよ。むしろ嫌なことの方が多いと思う。それでも生きていかなきゃいけないし。それが人生なんです。そういうもんです。毎日毎日楽しいことばかりだったら、逆につまらないと思うよ。いいことが当たり前になってくるもん」

 最後に、以前と比べてどこか雰囲気が柔らかくなった三浦投手に、「番長、悟りを開いた感じですか?」と聞くと、爆笑しながらこう答えた。

「そうか? でもギラギラしたものは持ってるよ。絶対あの場所に戻ってやるって思ってるからね。ベナントレースはまだ長いから。絶対に出番がくると思っているから。やることをやって準備しているよ」

 一軍に三浦投手の姿がないと、何か忘れ物をしてしまっているように感じるのは私だけだろうか。チームの大きな柱であり、DeNAファンだけでなく、他チームのファンにも愛される番長。一軍の眩いライトに照らされマウンドに立つ姿を、信じて待つのみだ。

【了】

白井京子●文 text by Kyoko Shirai

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