【小島啓民の目】全ては技術に直結 侍ジャパン仁志、稲葉両コーチに見る道具の優れた扱い方
木製バットの特性を熟知する稲葉氏、真似できないバットコントロール
一方、バットですが、私がその特性を上手く利用しているなと思う代表選手は、侍JAPANコーチで元日本ハムの稲葉篤紀さんです。特にインコースの打ち方は、なかなか真似をすることができない技術であると思います。
ボールをできる限り体の近くまで呼び込み、やや前の手(右手)の肘を抜きながらバットの芯でボールを捉え、後ろの手(左手)でボールを飛ばす方向へ身体ごと押し出し、フェアグラウンドにボールを打ち返すという技術を持っています。
普通、インコースのボールを打つのに、肘を曲げたままボールをとらえることは非常に難しく、前の手が伸びた状態でインパクトを迎えます。 したがって、芯に当たってもファールゾーンに飛んでいくということが多くなりがちです。稲葉さんの打法は、木製バットの特性である「バットの芯に当てないと飛ばない」、さらに「フェアゾーンに打つためにはインパクト時のバットの角度が重要」という点を熟知したもので、非常に研究されていると言えるでしょう。芯の位置や角度を確認、理解し、ボールを打っていることが分かります。
硬式野球部では高校までは金属バット、大学以上は木製バットを使いますね。その特性は大きく違います。金属バットの飛距離と木製バットの飛距離は、あるプロ打者に聞いてみましたが、体感で15m程度、金属バットが飛ぶような気がすると言っていました。また、別の打者に聞いてみると、木製も芯でしっかりと打てれば金属バットと同じぐらいの飛距離は出ますという方も。バットの芯、いわゆるスウィートスポットと呼ばれる部分は木製の場合は、1点しかなく、バットの先端から10cm~15cm程度、グリップ寄りにあります。
一方で金属バットのスウィートスポットは先端10cm~30cm程度と広く位置します。簡単に言うと、本当に当たったら飛ぶ部分が木製バットの“点”に対して、金属バットは“面”で存在すると理解してもらえば、分かりやすいかと思います。