恐怖心の中でバットを振り続ける内川聖一 工藤ホークスの4番を担う重圧とは

右打者として史上初の8年連続3割がかかる内川の挑戦

 二塁ベース上で喜びを爆発させた。両手を振り下ろし、何度もガッツポーズを決めた。一塁ベンチに向かって、両手を掲げた。久しぶりに笑顔がはじけた。6月21日の日本ハム戦での一幕。ソフトバンクの4番・内川聖一が決勝打を放ったシーンである。

 2点ビハインドで迎えた7回だった。明石健志の適時打で1点を返し、なおも1死満塁。マウンド上には、日本ハムの左のリリーフエース・宮西尚生。2ボール1ストライクからの4球目、見逃せばボールという低めの139キロ、真っすぐを内川がはじき返した。打球は前進守備を敷いていた中堅手・岡大海のグラブのわずかに上を越えていった。走者一掃の適時二塁打で、一気に試合をひっくり返した。

「ああいうところで打ちたいなと思ってやっていた。ゴロ打ちゃ、ゲッツー(の場面)。ここまでイヤっていうくらい2つアウトになってきた。いっぱいいっぱいですよ。でも怖い、恐怖心の中でバットを振らないといけない。結果を出したら、大きなものが返ってくると考えれば、やれるかな」

 試合後、こう言葉を並べていく内川の表情には、安堵の色が広がっていた。右打者として史上初の8年連続3割がかかる今季。希代のバットマンは深い苦悩の闇の中にいた。

 開幕から7試合で6併殺という状態からスタートしたシーズン。4番、そして主将という立場が、内川の打撃を狂わせていた。長打を欲したのか、強引さが目立った。らしさが影を潜めると結果もついてこなかった。5月17日の西武戦(ヤフオクD)で3打数無安打に終わると、打率は今季ワーストの2割6分1厘まで落ち込んだ。

 ただ、そこはさすが内川聖一である。状態が悪いながらも、徐々にヒットは増えていく。交流戦が始まった5月26日の中日戦(ナゴヤD)で4打数2安打とすると、打率3割台も回復。その後も、3割1分前後をキープしている。

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