恐怖心の中でバットを振り続ける内川聖一 工藤ホークスの4番を担う重圧とは
「恐怖心から逃げるつもりはない」
上向いてきた数字とは対照的に、その表情はずっと浮かないままだった。3安打しても、本塁打を放っても、景気のいい言葉は出てこない。45打点(6月24日時点)も決して悪い数字ではないのだが……。
一振りで勝負を決められる、劣勢をひっくり返すことが出来る。内川の求めている4番の理想は高い。決勝打を放ったのは6試合。李大浩の7試合に次ぎ、柳田悠岐とともにチーム2番目だが、それでも納得はいっていない。併殺はリーグトップの14併殺。チャンスを潰してしまっているという自責の念の方が強い。
背番号1が並べる言葉の数々は、さながら哲学者、求道者のようである。
「恐怖心から逃げるつもりはない。怖い、恐怖心の中でもバットは振らないといけない。逃げることはダメだなと。こういう景色、解放感。求めてやってきたことが、1つ叶ったかな。こういうものがあるんだと思えば、何とかなるかな」
4番としての重圧、そして、恐怖心。それは、シーズンが終わるまで消えることはないだろう。乗り越えた時に眼下に広がる達成感、解放感こそ、悩める主砲の心を一時でも晴らしてくれる唯一無二のもの。その瞬間を求めて、ギリギリの精神状態の中で、内川はチームのために、今日もバットを振る。
【了】
フルカウント編集部●文 text by Full-Count