なぜロ軍選手が軒並み上位に? MLBで持ち上がる球宴ファン投票の問題点
偏りが生じやすい新システム、果たして改善策はあるのか
問題の1つは、今年から変更された投票形式にある。これまで球場に設置されていた投票用紙による“アナログな”投票形式はなくなり、インターネットによる投票だけに一本化された。1人あたり最大35回まで投票できると制限が設けられているが、これを破るのは簡単。複数メールアドレスを持っていれば、70回でも105回でも簡単に投票できてしまう。
さらに、選手を選ぶ際、画面に並ぶ各チームのマークをクリックすると、ポジション毎に当該チーム所属選手の名前にハイライトがかかるため、1チームに偏った投票がしやすい作りになっている。加えて、不正投票をなくすために表示されたランダムな数字をタイプしなければならない手間はあるが、一度投票したら「SUBMIT AGAIN(もう一度投票しよう)」のフレーズが表示され、すぐ同じメンバーに投票できる仕組みだ。ファンに「面倒くさい」と思わせずに投票させるための工夫の1つだろうが、皮肉にも偏った結果を生む理由が、そこにはある。
さまざまなメディアで、いろいろな形の改善策が提案されているが、ESPNのベテラン記者ジェイソン・スターク氏の提案を紹介したい。来季から導入しやすく、理に叶っているからだ。ファン投票も選手間投票も現行のまま。だが、ファン投票で選出された選手を無条件で先発させるのではなく、選手間投票で3位以内に入らなかった場合には、選手間投票で1位になった選手を先発させ、ファン投票で1位となった選手は控えに回る。ファンの意見も選手の意見も尊重される名案だろう。
個人的には、ファン投票と選手間投票の優劣を、現行と逆に変えてしまってもいいのではないかと思う。つまり、選手間投票で1位だった選手が先発となり、ファン投票で選ばれた選手が控えとして選出される方法だ。真剣勝負という大前提を崩さずに、ファンの意見も反映できると思う。だが、ファン投票が最優先されないことを理由に参加が遠のく可能性も大。想像以上に公平で公正なシステムを作るのは難しいのかもしれない。
最終的には、今季オールスターとして誰が選ばれるのか。現地5、6日の結果発表が待たれる。
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佐藤直子●文 text by Naoko Sato
佐藤直子 プロフィール
群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。