いかにして観客を守るか MLBで叫ばれる試合会場の安全対策
子供にはヘルメットをかぶせる親も、コミッショナー「ファンの安全が最優先事項」
もちろん、観客はファウルボールが飛んでくる危険性を知っているため、子供には打者がかぶるようなヘルメットをかぶせる保護者もいる。2007年にマイナーリーグで一塁コーチの頭にファウルボールが直撃して命を落とすという悲劇が起きて以来、一塁・三塁コーチはヘルメットをかぶることが義務づけられるようになったことを考えれば、当然の判断だろう。3時間ヘルメットをかぶることが、一生を守る可能性を秘めている。メジャーリーグ主導で、内野席の前方席に座るファンに無料でヘルメットを貸し出すサービスを始めるのも1つの手だろう。
メジャーリーグのマンフレッド・コミッショナーは、先日ボストンを訪れた際に「ファンの安全が何よりも最優先事項」と話し、いろいろな角度から安全に野球観戦ができる対策を考えていくという。ファウルボールを防ぐネットの幅を拡大させることも検討課題の1つ。また、折れたバットが客席に飛び込む危険に関しては、バットの素材や形状など新たな基準を検討することも考えているそうだ。
選手とファンの近さが魅力のメジャーリーグだが、その特長を失わずに、どうやってファンの安全性を高めていくのか。今後の議論や対策に注目が集まる。
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佐藤直子●文 text by Naoko Sato
群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。