MLBロードショー開幕 田口氏が語るMLBの魅力、イチローら日本人選手の今
控えのイチローが怪我しないのは「本当にすごい」、 日本人選手には「色んな道が少しずつ開かれている」
――こういう状況になってくると、イチロー選手が怪我しない凄さを改めて感じます。
「彼が怪我していないのは、今年に関しては本当に凄いと思うんですよ。代打ばかりで1打席に立って、ちょっと走っただけで終わってるという状態が続いていますが、ああいう使われ方をしていると、結構、体にガタが来るんですよ。
毎日、4打席立っていたのが、『行って止まって、行って止まって』とやっていると、すごく体がきついんですよ。その中でもイチロー選手は怪我していないので、それは凄いと思います」
――田口さんも、特にカージナルス時代などはベンチから大事な場面で起用される、という形でした。
「やっぱり体が厳しくなってくるんです。『たまにギアをトップに入れて、次の日はベンチにずっと座っていて』と、やっているのは、本当に体がキツイ。僕は軽い肉離れみたいのは何回かやったんですけど、ごまかす方法も知っていたから何とかなりました。彼はそれすらないですからね。凄いと思います」
――川崎選手はマイナーの大変さを知った上で、ああいう形でやっています。これはやはり大変なことですか?
「彼はタフだと思います。あの生活を笑ってやっていますよね。絶対にキツイはずですよ。心の強さは凄いと思います」
――ああいう選手が活躍していると、日本のファンもMLBが身近に感じるのではないしょうか?
「それはもちろん。カナダの人たちは彼のことが大好きだし、日本のファンの人も見ていたら楽しいと思います。彼が活躍してくれると、僕らも楽しいですからね。ただ、今年でおそらく(マイナー行きの)オプションがなくなるので、来年の契約はまた大変なことになってくる。今年の後半戦でどういう勝負をしていくかということが、また重要になってくると思います。
3Aでの成績もそうですし、メジャーに上がってからの成績も関わってくるでしょうし。この1年の成績というのは、来年、オプションがなくなることを考えると、非常に重要です。来年は契約がなくなるという年にもなりかねない。本人は、それも分かって笑ってやっているので、凄いと思います」
――日本人選手についてやや停滞感がある中で、インディアンスの村田透投手が6月28日にメジャー初登板初先発を果たしました。これで野茂さんから続く日本人投手のメジャーデビューは21年連続とバトンがつながりましたが、このことにはどんな意味を感じますか?
「継続するということの意味は、僕はあまり感じないんです。ただ、今回、村田選手がああやって投げたというのは、日本の選手にとっては希望だと思うんです。トップでやれている人間にとってみたら、あまり大したことじゃないかもしれないですけど、村田選手は日本では1軍で1回も投げてない。それが5年かかってメジャーのマウンドに上がったわけですよね。その意味って凄く大きいんじゃないかなって思うんです。継続したというよりも、彼が向こうで5年間もがき続けた結果がこうなったということに、凄いメッセージがあるんじゃないかと思います」
――とてつもなく大変なことを乗り越えてきて、こういう道もあると示してくれたと。
「また1つの違うものを彼が見せてくれた。誰とも違う野球を見せてくれた、ということですね。そういう意味では、メジャーというのは、言い方は悪いかもしれませんが、なんでもありなんです。いろんなことが起きるのが当たり前の世界。今回また、そういうドラマが生まれたということだと思います」
――ドラフトでヤンキースに入って、傘下1Aでプレーしている加藤豪将選手もいます。
「彼もまた特殊なケースですよね。彼もメジャーに上がってくると、『高校から行こうか』と言う選手ももちろん出てくるでしょうし。高校から行くとなると、最初からトライアウトの連続となるので、そこに耐えられるかっていうことも課題となってきます。でも、メジャーへ向けていろんな道が少しずつ開かれているのは確かですよね」
【了】
フルカウント編集部●文 text by Full-Count