殿堂入り式典で大投手が名スピーチ 肘の手術増加に「未来の投手を大事に」
「14、15歳でこの手術を受けることは普通ではない」
「この場を次の表彰者に譲る前に、トミー・ジョン手術について語らなければ怠慢になるでしょう。私は現時点でただ1人、トミー・ジョン手術を受けながらも殿堂入りした選手になりました。
それは伝染的な怪我になっています。そして、我々の野球に大きな影響を与えるものです。私のキャリアも終わったかと思いましたが、ジェームス・アンドリュース医師のおかげです。正確性を持って行われた手術は、まるで腕にバンドエイドを張るような多くの誤解を生みがちです」
キャリアを左右する大手術を乗り越えた投手の代表として話し始めたスモルツ氏の言葉には使命感がこもっている。
「私は14、15歳でこの手術を受けることは普通ではないと、家族と両親に認識するように奨励したい。この年代では、まだ野球は1年間続けて行うスポーツではない。もっと身体能力を鍛えるチャンスも、他のスポーツもある。そんなやり方で奨学金や契約金を手にするような組織運営もさせてはいけない。
子供の野球に対する情熱は理解できるが、競争力の高い投球をしなくてもそれは可能だ。外に出られなければ、楽しくない。ボールも十分に投げられないかもしれないが、あまりに若いうちに強く投げ込みすぎることが、この問題の原因となっている。だから、未来の偉大なピッチャーを大事にしてください」
アメリカでは、中学生年代でトミー・ジョン手術を受ける患者が増えているという。成長期での過度な投げ込みやこそが靭帯損傷の大きな理由だと、スモルツ氏は指摘している。また、トミー・ジョン手術の成功率が高く、結果として肘が強化される例も多いことから、米国では軽度の負傷でもメスを入れるケースが増加。スモルツ氏は、この流れにも異を唱えたいようだ。
メジャーでエース級が次々にトミー・ジョン手術を受ける現状は、野球の人気と魅力を損なうことにもなりかねない。スモルツ氏のスピーチは、アメリカのみならず、世界中のピッチャーとその家族、指導者らに向けた心からのメッセージとなった。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count