2番打者には強打者を… よく聞く説の根拠とは?
セイバーメトリクスにおける打順の考え方
「2番打者には攻撃的な選手を入れるべき」
「メジャーリーグでは2番に強打者を置く」
主流とまでは言えないが、少し熱心なファンなら一度は聞いたことがある説だろう。しかし、この説を裏付ける理論がどうやって導かれているのかの説明まではあまり聞こえてこない。そこで、アメリカにおけるセイバーメトリクス研究での、打順に関するベーシックな考え方をまとめてみたいと思う。
コンピュータ・シミュレーションによる帰納的アプローチ
帰納とは、事例を多数そろえ、その事実から原理や法則を導き出すことをいう。この方向から最適な打順を模索する際、最もよく見られる手法はコンピュータ・シミュレーションを用いるものだ。
様々な構成の打線のデータをコンピュータに入力し、それに基づいた「野球ゲーム」をコンピュータに自動的に行わせ、その結果を集計していく。あり得る打順の組み合わせを総当り的に試したところで、どのような打順で得点数が伸びているかを調べるのだ。
結果として最強打者を2番にした場合に最も得点が高くなる傾向があれば、「最強打者を2番に置くべきである」という法則が見えてくる。
実際にこのような検討を行った人が発表しているテキストを整理すると、次のような示唆・結論が得られる場合が多いようだ。
○最強打者は4番ではなく2番に置くべき
○基本的に強打者から順に並べるような形の打線が効果的
○ただし、多少の打順の違いによって生じる得点数の増減は一般にごくわずか
打順について考えるとき、つい、「1番と2番がチャンスメイクをして、溜まった走者をクリーンアップが……」といった物語的な役割分担や「下位にも適度に強打者を置いて“恐怖の下位打線”を……」など、ひねりのある案を考えてしまう。
だが、基本的には単純に上位に強打者を集めてヒットやフォアボールを集中的に発生させれば、その過程で自然と得点が生まれてくるものであり、そのような原則を尊重することが重要であるようだ。