ヤ軍投手コーチが改めて振り返る黒田博樹の記憶 「真のプロフェッショナル」

元同僚捕手「プロとしてお手本にしていた」

 マーリンズの一員として今春のキャンプに参加していたクライボーンは「ヤンキースを出た後も、彼にもらったトレーニングシャツを着て試合に臨んでいる。彼は研究熱心で準備を怠らない。配球やマウンドに上がる際の心構えを学んだ」と話していた。黒田と接することで日本文化への興味も深まったそうで、侍に関する書物を愛読するようになったという。ヤンキースを去ってからも黒田を慕う気持ちに変わりはないようだ。

 今季、新天地のパイレーツで正捕手に定着したセルベリは打率と出塁率で捕手としてリーグ2位という活躍を見せ、プレーオフ争いに貢献している。「プロとしてお手本にしていた。いつも気にかけてくれる優しさがあった」と言う。

 ドジャースとヤンキースの計7年間で通算79勝を挙げ、防御率3.45。特に投手に厳しい環境のヤンキースで3年連続199投球回を投げて2ケタ勝利をマークしたのは特筆すべきだろう。在籍3年と決して長いとは言えないが、抜群の安定感で名門球団の先発ローテーションを守り抜き、地元メディアから真のエースと評されることもあった。

 今シーズン、黒田が付けていた背番号18は、新加入のグレゴリウス遊撃手が付けており、ニューヨークでヒロキ・クロダの名前を耳にすることも多くなかった。だが、黒田を知る関係者に「男気」エピソードについて問いかければ、今でも熱いメッセージが届いてくるのは、右腕が残した足跡のようにも思えるのだ。

【了】

伊武弘多●文 text by kouta Ibu

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