メジャーの最強打者は2番にいる――元阪神助っ人が比較する日米4番像

「今のメジャーならイチローは理想的な4番打者」

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ヤンキース時代の松井秀喜【写真:田口有史】

「今のメジャーならイチローは理想的な4番打者とも言える。初回が3者凡退なら、次の回に4番がリードオフになるからね」

 もちろん、レギュラーとして活躍していた頃のイチローという意味だろうが、なかなか面白い視点だ。イチローの走者を置いての通算打率は3割1分5厘。例えば、昨季までヤンキースに所属した好打者ジーターも同じ部類か。チャンスメーカーにもポイントゲッターにもなれる打者が4番に座れば、1、2回に多彩な攻撃が生まれそうだ。

 一方の日本では、今も一気に大量得点を狙うのではなく、確実に1点を取る作戦を重視する傾向にあるようだ。クールボー氏は「日本では得点をいかに『生み出す』かについて作戦を立てて、それぞれの役割に合った打順を組む傾向にあるような印象を受けた。リードオフマンが塁に出ると、2番打者は必然的に送りバントで走者を得点圏に進めようとする。そうなると3、4、5番が走者を迎え入れる役割となる」と日米の違いを指摘する。

 だからこそ、4番の責任も大きくなる。クールボー氏も阪神時代に4番を任された際、これまでに味わったことのない重圧を感じたという。だが、それはとても興味深い経験だったようだ。

「大事なところで打点を挙げる機会が増えるし、時には本塁打を打つことを期待される。チームを背負う重圧はあった。でもそれ以上に期待されて打席に立つことに喜びを感じた。阪神ファンは特に熱狂的だったしね。あのような雰囲気の中でプレーできたことは最高の経験だった」と懐かしそうに振り返る。

 選手のデータが細分化され、時代とともに推移していくメジャーのベースボールと、古き良き慣習を残しながら独自に発展していく日本のプロ野球。日米の野球文化や考え方の違いが「打順」に表れているのは興味深い。

【了】

伊武弘多●文 text by Kouta Ibu

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