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山崎康、松井裕、大瀬良…優れた投手は先発で使うべきか、抑えで使うべきか

「優秀な投手を先発にするか、抑えにするか」。メリットが大きいのは…

 レバレッジ・インデックスによる質の分析では抑えの重要性が示された。リプレイスメント・レベルによる量の分析では登板量の稼げる先発の重要性が示された。では両者を総合すると、どちらが重要という結論が出るのだろうか。

 拍子抜けする結論かもしれないが、結局のところチームごとに状況は異なり控え投手のレベルなどもケースバイケースだから、どちらがいいと一概にはいえない。しかし一応の目安として、ここまで挙げてきた簡単な数値例を使って考えてみたい。

 まず、防御率3.00の投手Aが先発として180回を投げれば、防御率5.50の控え投手Bとの比較では50点の貢献(失点の阻止)となる。

 同じ投手を抑えに回して投球回が60回に減少すると、貢献は16.7点になる。ただしこの場合の16.7点は試合を決定づける重要な局面での点数だから、レバレッジ・インデックスによって仮に通常の1.5倍の重みがあると評価するなら、実質的には25点分の働きであるといえる。(ここで用いたリプレイスメント・レベルの防御率やレバレッジ・インデックスの数字は現実の統計でみられる、ある程度典型的な水準を抜き出したものになる)

 この計算からは、優秀な投手を先発で使えば50点の利益が得られるが、抑えで使えば25点となるため、一般論としては先発で起用するほうがメリットが大きいという結論が得られる。

 もちろん、ここで示したのは仮想の数字だから50や25という値そのものには深い意味はない。しかし、現実的にあり得るレバレッジ・インデックス、先発と抑え、リリーフの間の投球回格差の範囲では、原則として「レバレッジによって得られる質向上の利益」と「リプレイスメント・レベルと比較した量減少の損失」では、後者の損失のほうが大きく上回るというのが分析家の中でおおむね一致した見解と思われる。

 つまり、セイバーメトリクスの分析家の間では「優秀な投手を先発にするか、抑えにするか」という選択に関しては、「先発にするほうがいい」というのが通説となっているようだ。

「先発で使わないのはもったいない」「いや抑えも重要だ」と役割の性質だけに注目して議論していると、比較が難しいため答えはなかなか出ない。どちらも大切な役割だからだ。こういう問題にうまく数字を持ち込むことで、さらなる考察を可能にしてくれるのがセイバーメトリクスの存在意義の1つだろう。(※2)

※1
具体的にどういう控えの戦力を抱えているかは個々の球団の事情による。しかしそれを考慮しだすと画一的な基準から選手を評価することができないため、一般的に控えにこれくらいの働きは期待できるだろうというレベルをひとつの基準として考える。

※2
もちろん、投手によって先発と抑えで適性が異なる場合もある。球団首脳陣などがここまで述べてきたような考え方を採りいれるとしても、実際に意思決定するときには、さらに個別具体的な事情を踏まえた分析を行っているとみられる。

【了】

DELTA・蛭川皓平・秋山健一郎●文 text by DELTA HIRUKAWA,K AKIYAMA,K

DELTA プロフィール

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。http://www.deltacreative.jp

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