66歳、奇跡の逆転劇― コリンズ監督、晩年に花咲く
ニューヨークで「再生」、1986年以来のWS制覇へ導けるか
どんな厳しい敗戦の後でも、番記者の質問に真摯に答えた。時にはファンのように敗戦を悔しがり、劇的な勝利のときには誰よりも興奮して喜んだ。選手を公然と批判しなかったのも、過去の経験を生かしたのかもしれない。デービッド・ライト内野手の長期離脱やハービーの投球回制限問題など困難な状況を乗り越え、最後までチームを一つにまとめたのは見事だった。
ニューヨークのチームで「再生」されたという点では、ヤンキースで名将としての地位を築いたジョー・トーリ元監督の状況と似ているかもしれない。
名選手として現役時代に活躍したトーリはメッツやブレーブス、カージナルスで監督を務めたが、成績不振から解任され、監督としての才能に疑問符がついていた。だが、1996年にヤンキースの監督に就任すると、いきなりワールドシリーズを制覇。ちょうどデレク・ジーターやマリアノ・リベラ、ポルヘ・ポサダら後に主力となる選手が台頭し始めた頃で、黄金期を築き上げた。
メッツも若いエース級の先発陣はあと数年間健在。2017年シーズンまでにチャンピオンに輝けば、コリンズはニューヨークの名将の立場に近づけるかもしれない。
ワールドシリーズ第5戦で先発ハービーの交代時期を見誤ったとして一部ファンから批判の声は残っている。周囲の期待も就任以来最も高くなる来季は、より厳しい戦いが待ち受けるだろう。「来シーズンのチームに対する期待はこれまで以上になるだろう」とコリンズ。1986年以来の優勝をもたらすことが、最年長の66歳指揮官に残された最後の宿題となる。
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伊武弘多●文 text by kouta Ibu