大学日本一の裏にあった幻のプラン 絶対エース不在も栄冠、亜大の苦闘

決勝でも4投手をつぎ込んで早実に競り勝つ

「サードの藤岡を使うと決めていた。その練習もしていたし、150キロ近い球も投げていたので」

 藤岡は強肩強打を誇る三塁手。10月22日のドラフトでは指名漏れこそしたものの、プロのスカウトからも肩の良さは評価が高かった。岡山理大付高時代は投手としても活躍したが、リーグ戦では登板なし。数々の修羅場を経験してきた4年生野手に託す、まさに緊急事態のウルトラCの起用法だ。

 結局、水本が予想を上回る代打逆転2ランを放ち、「投手・藤岡」プランは幻に。それでも、この構想こそが、ギリギリの投手陣で戦ってきたことの裏返しでもあった。

 決勝でも4投手をつぎ込み、最後は花城を回またぎで登板させるなど、総力を振り絞った。「弱い」といわれてきた投手陣が、春の日本一軍団・早大を相手にして、最高の結果を残した。

 亜大といえば、日本一厳しいともいわれる練習量で厚い選手層を築き上げていた。一方で全力疾走や攻守交代の速さ、ベンチの声出しなど、基本中の基本をどこよりも大切にしている大学でもある。厳しい鍛錬の中でどんな試合展開でも食らいつく精神力を身に着けてきたのだろう。最後はそんな学生野球らしさが生きた、大学日本一だった。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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