マリナーズが青木宣親を早々に獲得したワケ 双方のメリットが合致か
高い出塁率に盗塁もできる青木、強打者の前を打つリードオフマンに適役
ジャイアンツは先発投手の補強を優先するために青木との契約を後回しにしたわけだが、今回有力なFA外野手を差し置いて契約合意に至ったことで青木の契約がいかにお買い得だったかということが分かる。ジャイアンツは後で後悔する決断になるかもしれない。
1番定着を希望する青木にとっても、マリナーズはチャンスの多い球団と言える。現時点で外野陣は、左打者のセス・スミス、レオニス・マーティン、青木と右打ちのフランクリン・グティエレスの4人がレギュラー候補。長打はあるが、三振の多いマーク・トランボを放出し、青木を獲得したことは大きなプラス。スミスとグティエレスが左翼で併用され、守備に定評のあるマーティンが正中堅手、青木は右翼を任されることになりそうで、ある程度の出場機会は得られるだろう。
マーティンは打撃に荒削りな部分も多く、通算出塁率は3割5厘。他に1番打者候補も不在だ。ロビンソン・カノ、ネルソン・クルーズ、カイル・シーガーという好打者が中軸にいるだけに、出塁率の高いリードオフマンがチームに足りないピースだった。昨季までの4年間で3割5分3厘という高い出塁率を記録し、20盗塁以上を期待できる青木はまさに適役。通算の三振数(169)が四球数(171)を下回っている点も、「出塁」と「コンタクト力」を重視する同GMの野球に合致している。
青木にとっては2年ぶりのア・リーグ復帰となる。マリナーズの「1番・右翼」といえば、過去にイチロー(現マーリンズ)が12シーズンの大半で務めた「定位置」でもある。尊敬する大先輩の背中を追うように、左の好打者がチームをけん引する活躍を見せれば、シアトルのファンに懐かしい記憶と興奮を蘇らせることになるだろう。
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伊武弘多●文 text by Kouta Ibu