衝撃の男気復帰から1年、黒田博樹の「MLB→NPB」における投球の変化とは
黒田の投球に見える、ある種の余裕
通常、同一環境での投球で三振が獲れなくなったのであれば、力の低下が疑われる。スイングストライク率(空振り率=全投球のうち打者が空振りした割合)を見ると、2015年の黒田は8.7%、MLBでの7シーズンの平均は10.0%。MLB時代に比べ空振りも獲れてはいない。この点だけ見れば、黒田の投球が日本の打者に通用しない部分がある、もしくは40歳という年齢がパフォーマンスを落とした可能性を疑う必要もあるだろう。
もちろんのこと、今回の場合は環境が変わっている。NPBはMLBよりも三振が少ない。2015年のMLB全体の平均K%は20.4%だが、NPBは18.3%。強振に対する見返りの大きいパワフルな打者が多いMLBでは三振を恐れず振っていき、見返りの小さい打者の多いNPBは三振を避け、バットに当てにいく志向の違いがあると見られる。黒田のK%の下落にはNPBの環境が影響していると見るべきだろう。逆にゴロ率については逆で、MLBよりも打球がゴロになりやすいNPBの環境の影響で、黒田は能力とは別の部分で数字を向上させたとみられる。
そのほかに黒田は、全投球のうちストライクゾーンに投じたボールの割合がMLBでの7シーズンの平均42.3%に対し、2015年は46.6%(規定投球回到達26投手中3位)。また、ボールゾーンに投げた球を打者が振りにいった際、バットに当たった割合はMLBでの7シーズンの平均は63.6%だったが、2015年は67.5%に上がるなどの変化が見られる。
もし黒田が空振りや三振が獲れず投球がネガティブな方向に向かっているのであれば、こうした数字の変化は見られないだろう。ストライクゾーンにボールをどんどん投げ込み、ヒットになりにくいボールゾーンのボールを打たせている状況からは、投球におけるある種の余裕がうかがえる。