森脇氏が見るプロ野球春季キャンプの今 各球団“一極集中”のメリットは?
オリックスも昨年宮古島から宮崎へ、メジャー流導入にも様々な見方
――オリックスの監督を務めていた2015年にはキャンプ地が沖縄・宮古島から宮崎に移転。離島の宮古島では練習試合、オープン戦を組むことが難しく、他球団に比べれば球場施設が整っていない状況だった。他球団にも負けない施設が揃った新天地への移転は森脇氏の一つの功績とも言える。
「様々な人々の協力があり、これまで宮古島でキャンプを行ってきました。この場をお借りして、宮古島の方々には心から厚く感謝を申し上げます。もちろん歴史、文化も大切になります。チームの将来を見据えた上でも施設、環境の改善は必要だと感じてはいました。オーナーの勝ちたい、強くなりたいという熱意はいつも感じていましたし、あとはフロント、現場が常にベクトルを統一して正しい方法論を決め、一本化して歩み続けるかが大切です。宮崎はソフトバンクのコーチ時代からよく知っていた土地でした。宮崎協力会の方々ともすぐに話し合うことができ、グラウンドの状態、施設面の強化などスムーズに話を進めることができました。今年からは1、2軍合同でキャンプを行いますのでしっかりとした基盤を作って欲しいと思います」
――昨今ではメジャー流の調整、トレーニングの導入など様々な意見がある。日米でのキャンプの違いはどのような点があるのか。
「素晴らしいトレーニング方法、施設などがあり、良いものは取り入れるべきだと思いますが、全てメジャーに右にならえとは思いません。日本とメジャーでは試合数の違い、開幕の時期の違いなどがありますから。
向こうは主にバッテリーが2月中旬、野手は2月下旬にその地に集まってスタートする。特に主力選手は試合で体を作っていくスタイルですし、シーズンは長いと捉えている。その点、日本はメジャーと比べると試合数が少なく、開幕するタイミングも早い。様々な条件を考えると、2月のキャンプが持つ意味、重要性は日本の方が大きいと思います」
――その分、選手たちの仕上がりは早くなる。
「今の選手は選手の8割が闘える心身を準備してキャンプに入ってきます。2月1日に全員で顔を合わせた時に競争はスタートしている。早い時期に実戦を行い、若手のレベル、変化を見るのもそうした理由の一つだと思いますね」
――プロ野球ファンにとってもお目当ての選手が間近で見られる春季キャンプは楽しみの一つとなる。
「キャンプはシーズン中とはまた違った楽しみがある。選手たちが表舞台に立つまでのプロセスをより近い距離で見ることができますから。選手もそうですが、ファンにとっても2月の1か月はある意味シーズン中よりもワクワクする期間なのではないでしょうか」
◇森脇浩司(もりわき・ひろし)
1960年8月6日、兵庫・西脇市出身。55歳。社(やしろ)高から1978年ドラフト2位で近鉄入団。84年に広島、87年途中に南海に移籍し、96年限りで引退。通算843試合、打率2割2分3厘、14本塁打、75打点。1997年から2009年までダイエー、ソフトバンクでコーチや2軍監督を歴任し、06年には胃がんの手術を受けた王監督の代行を務めた。11年に巨人の2軍内野守備走塁コーチ。12年からオリックスでチーフ野手兼内野守備走塁コーチを務め、同年9月に岡田監督の休養に伴い代行監督として指揮を執り10月8日の最終戦終了後に監督就任会見を行った。監督通算成績は341試合202勝193敗11分け。勝率5割5分1厘。178センチ、78キロ。右投右打。
【了】
フルカウント編集部●文 text by Full-Count