球界最年長野手になってもハードトレ 井口資仁を奮い立たせた王氏の言葉
王氏からかけられた言葉とは、「心に残っているものは多い」
練習前のお風呂場。シャワーを浴びていた井口の横をサウナ室から出てきた王監督が隣に立った。
「俺も入団したばかりのころは三振王って呼ばれていたんだよ」
何気ない一言だった。ボソッとつぶやいた。しかし、当時の井口には胸の奥深くまで響く言葉だった。そして、王監督はそこから、どのように三振王を返上すべく練習したかを懐かしそうに振り返ってくれた。
「迷いの中にいた僕の心をあの王監督の言葉が励ましてくれた。あの人でさえ打撃に悩んでいた。そう思うと不思議と気持ちが楽になった」
世界の王と言われた男でさえ、自信を失い、悩みに悩んだ時期があった。それにくらべると自分の突き当たっている壁はどれほどのものだろうか。自分も必ずこの壁を乗り越えてみせる。25歳の若者の心を奮い立たせるには十分な出来事だった。
「アドバイスが上手な人だった。打席に入る前に『フリー打撃のように打て』とアドバイスを頂いたことで、力みがとれてホームランを打った事もよく覚えている。あの人の言葉で心に残っているものは多い」
あれから月日は流れ、今や球界最年長野手となった。日米通算2000本安打を13年に達成し、日本通算250本塁打まであと、6本塁打(日米通算300本塁打まであと12本)。1000打点まで32打点と様々な記録の、今季中の達成に注目が集まる。
「すべては積み重ね。これから準備を重ねて、つねにベストパフォーマンスをしたい。まだまだ若い選手には負けたくない気持ちが強い」
3月25日、QVCマリンフィールド、対北海道日本ハム。井口の20年目のシーズンが幕を開ける。球界最年長としてチームを、球界を引っ張る。ファンに、若い選手たちに見せたい背中がある。背番号「6」の新たな戦いがまもなく始まる。
(記事提供:パ・リーグ インサイト)
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マリーンズ球団広報 梶原紀章●文 text by Noriaki Kajiwara