「米国流」開幕前後の恒例行事が持つ意味とは?
メジャーとマイナー、開幕前イベントの違い
開幕をホームもしくはビジターで迎えるかにもよって差はあり、球団によっても違いはあるが、私が経験した一例を挙げると、ビジターの地で開幕を迎える時は選手、コーチ陣それぞれ決起集会のような食事会が行われている。レストランの地下にあるワインルームを貸し切って食事会が開催されたこともあった。
メジャーリーガー25人以上がテーブルに揃って食事をする「異様な」光景は今でも脳裏に焼き付いている。別の球団では、各ポジション別で食事会が開催されたこともあった。これはさほど日本と違いはないかもしれない。
一方マイナーでは、基本的にメジャーより開幕が数日遅いため、開幕がビジターであっても本拠地へ移動する余裕がある。そのため開幕前に日本の出陣式のようなイベントを開催することができる。これは私が経験した一例に過ぎないが、ある球団に在籍していた時には自治体の米国在郷軍人会主催で「ウェルカムホーム・ディナー」が地元ファンと選手・スタッフのために開催されたことがあった。
このイベントにはファンが事前に25ドル(約2800円)のチケットを購入し、テーブルに配置される。事前にリクエストしていれば、テーブルには選手がランダムで振り分けられる。開幕前にファンと選手が交流する地域密着型イベントだ。各テーブルで話し合う時間が与えられたあとに、会場では選手、コーチ陣が全員紹介される。毎年のように顔ぶれが変わるマイナー球団にとっては、新たなシーズンに向けて選手たちのお披露目の場となる。
ここにやってくる地元ファンは個々の選手のファンというよりは、自分の街に存在する球団のファンである。そのためシーズン前にイベントが行われることで、チームの存在だけではなく、選手を実際に知ってもらい応援してもらうというのは、地域密着を大切にするマイナー球団にとっては欠かせないことだ。