知られざる裏方の存在 選手を支えるプロフェショナルたち

二刀流」どころではない!?  マイナーでの兼務ぶり

 多くの人間が現場を支えるメジャーであっても、一人が何役もこなす必要がある。その舞台がマイナーとなると、裏方スタッフの多忙さはさらに増す。

 マイナーではメジャーのトレーナーのような3~4人体制とは異なり、基本的にたった一人で25人の選手を管理しなくてはいけない。さらにマイナーのトレーナーは、先ほども出てきたトラベリング・セクレタリーの任務も担うことになる。これまでいろいろなレベルでさまざまな役職の方と仕事をさせていただく機会があったが、移動を要するマイナー球団でのトレーナーほどタフな仕事はないのではないかと思う。

 ダブルA、トリプルAとレベルが上がるにつれて、彼らが扱うのはメジャー予備軍だ。健康状態やメジャーからのリハビリ組の状況を、随時メジャー側に報告する仕事もある。そしてメジャーの豊富なコーチ陣とは違って、マイナーでは(組織によって差もあるが)監督、打撃コーチ、投手コーチ、トレーニングコーチと4名しかスタッフがいないチームも多い。監督が試合中は三塁コーチも務め、投手コーチは先発・ブルペンの両方を支える。

 マイナーの施設は近年では素晴らしい設備が整ったボールパークが多いが、時にベンチからブルペンへと繋がる電話が故障している場合もある。その場合ブルペンコーチが存在しないため、控え選手が伝達役となってブルペンに走って伝言をしたり、ベンチにいる投手コーチがジェスチャーで選手にメッセージを伝えたりと、いろいろなシーンを目にすることがある。

 マイナーで働くスタッフはこういった過酷な現場で鍛えられてメジャーを目指す。選手たちだけではなく、裏方たちにとってもシビアな競争を勝ち抜いた先にあるのが、メジャーなのだ。グラウンドに立つ選手たちはもちろんだが、それを裏で支えるスタッフたちも競争を勝ち抜き、下積み生活を経験した者がほとんどだ。

 日米の野球界を支える裏方の多くも狭き門を勝ち抜いて、その職を勝ち取った。表舞台に立つことはほとんどなく、黒子の存在であり続ける彼らにとっても、長いシーズンが再び始まった。

【了】

(記事提供:パ・リーグ インサイト

「パ・リーグ インサイト」新川諒●文

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY