なかなか試合を中止にしないMLB なぜ米国ファンは雨の中待ち続けるのか
米国では青空の下、天然芝でプレーする選手たちを見ることが野球観戦の醍醐味!?
4月7日、ほっともっとフィールド神戸で予定されていたオリックス―楽天の試合は、プレーボール約4時間前の時点で雨天中止が発表された。天気は午前中から雨模様だったことから、選手にとってもプレーできる状態ではなく、集客も見込めないという早めの決断だったことが予想される。
日本ではドーム球場が多いが、パ・リーグでは千葉ロッテ、楽天が屋外球場を本拠地に持つ。一方、メジャーリーグでは現在、1球団のみが完全な密閉式ドーム球場を本拠地とし、1球団が人工芝の開閉式屋根付き、5球団が天然芝の開閉式屋根付き、それ以外の23球団は屋外球場となっている。
アメリカでは、青空の下で選手たちがプレーし、ファンも青空の下で観戦してこそベースボールという風潮が強いように感じる。ドーム球場を本拠地とするトロント・ブルージェイズ(開閉式)やタンパベイ・レイズは土地柄もあるかもしれないが、シーズン中何度も対戦相手として訪れると、いつも空席が多い印象があった。
数字を見ると、2014年シーズン総観客動員数でブルージェイズは30球団中17位、レイズは29位だった。そこからブルージェイズは好成績と共にファンが足を運ぶようになり、2015年シーズンは全体8位まで浮上した。一方で、レイズは観客動員数で最下位となってしまった。チームの成績が向上すればファンはやってくるが、下位に沈んでしまうとドームを本拠地にするチームはそれだけファンを呼び寄せるのに苦労するのかもしれない。
日本では音楽やエンターテイメントのイベントはドームで開催されることが多く、アーティストが「五大ドームツアー」と題して全国を回ることも多い。気候の影響もなく、音響調整も野外とは違って楽になり、イベントを運営する意味ではドームを好むのも不思議ではない。そういった環境に慣れている分、日本では野球観戦は、必ずしも青空の下でというこだわりは強くないのかもしれない。
だが、アメリカでは青空の下、天然芝でプレーする選手たちを見ることが野球観戦の醍醐味という感じがある。さらには、青空球場の特性を生かした花火などのイベントもシーズン中は多数企画されている。
もしかすると、米国ファンにとっては元々、野球観戦だけが目的でないのかもしれない。雨天中断となっても、その時間ビールを飲んだり、食事を楽しんだり、オフィシャルチームショップでグッズの買い物をしたりと、いろいろな楽しみ方ができる空間が多く存在する。外野にはスポーツバーのような空間を作り出しているボールパークも少なくない。そしてスイートルームでの観戦をしているファンも多く、彼らにとっては中断することでビジネスの会話や商談がその場でできる貴重な時間となるかもしれない。
さらには、公共の交通手段を使って観戦に訪れるファンが多い日本とは違って、車社会の米国は終電の時間を気にしなくてよい分、ある程度余裕を持って雨の中でも試合再開を待つことができる。日本では数時間の中断を挟んでしまうと、脳裏に終電の時間がよぎってしまうファンも多いだろう。