155キロの直球に87キロのナックル…パドレス捕手が衝撃の「投手デビュー」
「全球70マイルの球を投じる気はなかった」、4ポジションをこなす“偉業“も
大差がついた試合で、投手ではなく野手をマウンドに送るというのは、メジャーでは1シーズンに何回かは見られる光景。昨年10月4日のシーズン最終戦では、マーリンズのイチロー外野手が初登板し、フィリーズ打線を相手に最速88マイル(約142キロ)の直球などで1回2安打1失点の投球を見せていた。
もっとも、故障のリスクがあるため、野手がマウンドから全力でボールを投げることは少ない。ただ、この日のベタンコートは違った。先頭ロメロを右飛に仕留めた直球は96マイルを計測。さらに、2死一、二塁ではスミスへの2ボール1ストライクからの4球目で54マイルのナックルボールを投じ、外角低めに決まるストライクとなった。打者も手を出せずに見逃した一球に、地元テレビ局の実況は「ナイス!最高だ!イーファス(超スローボール)だ!」と大興奮。敵地セーフコ・フィールドもどよめきに包まれた。
「真ん中低めにボールを投げろって言われたんだけど、全球70マイル(約113キロ)の球を投じる気はなかった。最初の投球を見て、それから2、3球投げたら94マイル(約151キロ)出たんだ」
こう振り返ったというベタンコートはこの試合、捕手で先発し、左翼を守ってから登板。アマリスタにマウンドを譲った後は二塁へ回った。記事では、「1試合で投手、捕手、左翼手、二塁手の4つのポジションに就いた1913年以来5番目の選手となった」と、“偉業”だったことを紹介している。
さらに、グリーン監督がベタンコートをマウンドに上げた時に「どうなるの見当がつかなかった」と胸中を明かし、「他のポジションの選手が投手をやるのは嫌だろうけど、クリスチャンは試合に活気を運んでくれた」と称えたことにも触れている。一方的な試合の中で、記録と記憶に残る登板になったことは、間違いない。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count