指名人数は日本の10倍 熾烈な競争社会を生み出すMLBドラフト
ドラフト指名された選手が契約すれば、マイナーでは解雇の通達を受ける選手も
そのため、メジャーリーガーたちはドラフト当日を客観的に見ている選手も多いようだ。もちろん同じチームの主力選手が若手であって、自分と同じポジションの選手がドラフト上位で指名されれば、気持ちがいいものではない。だが、メジャーまでの道のりは簡単ではないと理解していて、自身も経験しているからこそ、すぐに危機感が生まれることは少ないだろう。
一方でマイナーリーグでは、その危機感の度合いは変わってくる。私がこのドラフト当日をマイナーのロッカーで迎えた時、在籍していた選手たちはテレビに釘付けで自らの球団が誰を、と言うよりはどのポジションの選手を指名するのかを気にしていた。
例えば球団がキャッチャーを指名した場合は、チームメートたちが同チームのキャッチャーにブラックジョークを投げかけるというのが恒例だ。正直、笑えるようで全く笑えないジョークではある。
なぜなら、ドラフトで指名された選手が契約に合意して、いきなりメジャーやその1つ下のレベルであるトリプルAで出場しないにしても、組織内のマイナーでプレーすることによって1人キャッチャーが余分に存在することとなってしまう。そのため、将来の見切りをつけられた選手は解雇される可能性もある。ドラフトが終わり、指名を受けた選手たちが次々に契約をしていくと、実は大きなニュースとはなっていないが、マイナーでは解雇の通達を受ける選手も少なくない。
米国のドラフトでは、指名された選手の喜びの声や飛び交う多額な金額で華やかな世界を思い浮かべる人もいるかもしれないが、一方では迫りくる新たな戦力と戦いながら気を引き締め直す、マイナーリーグの世界もある。ドラフト指名を受けても契約に至らない選手は存在するかもしれないが、それでも2015年MLBドラフトでは指名された最初の315人中、入団をしなかったのはたったの6人だった。
日米ではあまりにも規模が違うドラフト。それでも、ドラフトで新たな戦力が球団に加わることによって生まれる熾烈な競争社会は、そう大きく変わらないかもしれない。
【了】
(記事提供:パ・リーグ インサイト)
新川諒●文