名門球団が迎えるいつもと違う夏 ヤンキースが主力を放出する可能性は?
下位球団に取りこぼしなければ、プレーオフへの道が開ける可能性も
次世代の中核となる選手の台頭はチームにとってもファンにとっても願うところ。マイナーでは投打に有望株が育ってきており、世代交代をはかるには絶好のタイミングのようにも見える。観客動員は昨季1試合平均で4万人を割ったが、今季もここまで減少傾向。ファン離れをくい止めるためにも、若い主力選手にチャンスを与えることは長期的に見て理にかなっている。
だが、正直なところ、ヤンキースがシーズンを諦める姿は想像できない。幸い、5月18日以降、15勝8敗と調子を上げており、6月後半にかけてロッキーズとツインズという勝率5割を下回るチームと11試合の対戦が組まれている。9日までのエンゼルス4連戦を全勝したように、取りこぼし無く下位球団を叩ければ、プレーオフへの道も開けてくるだろう。
チャプマン、ミラー、ベタンセスという強力なブルペン3本柱がいるだけに、プレーオフ進出の権利さえ手にすれば、2009年以来のワールドシリーズ進出への期待も膨らむ。あとはベテラン中心の布陣でシーズン通して戦い抜けるか、だ。
10日のタイガース戦では35歳で衰えの指摘されていたサバシアが好投し、チームに5連勝をもたらした。キャッシュマンGMは高齢化の進んだロースターについて「チームの助けになれば年齢は関係ない。彼らの経験は見過ごされがちだ」と話していた。打率2割そこそこのAロッドをはじめ春先から調子の上がっていないベテラン陣の奮起が浮上の鍵を握るのは間違いない。
その一方で勝利を目指すなら、トレード期限までに起爆材となる効果的な補強が必須となるが、有望株を手放してまで大物選手を獲得するのかどうか。昨年7月15日時点で借金1だったブルージェイズがプライス投手やトゥロウィツキー内野手らをトレードで獲得する大型補強を展開し、ア・リーグ東地区を制した例もある。名門球団に流れる微妙な空気は、あと1か月でどのように変化するのか、注目したい。
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伊武弘多●文 text by Kouta Ibu