プロ4年目ブレークの裏に的確な自己分析 広島・鈴木誠也の“言葉力”とは
大谷&藤浪は「雲の上の存在」も「いつかは…」
そして3試合連続決勝弾となった3本目、この本塁打は、本来の左足を上げるフォームでの一発だった。「追い込まれていたので、長打は頭から消していた。フライを上げないように打った」という一打は、「たまたまいい角度でいった」とレフトのスタンドをはるかに超えていった。打撃フォームのことを聞かれた鈴木は「タイミングが合っていたので、(足を上げる)あの形になりました」と、冷静に話した。
オフの自主トレでソフトバンクの内川に弟子入りし、「技術的なことから考え方まで、いろいろと教わった」という鈴木だが、「いつかは内川さんみたいになりたいけど、今まで何年も続けてきて、自分を確立してきた選手。それを今すぐ僕がやってみても、絶対に崩れると思う」と、ただ盲信しているわけではない。「僕は足を高く上げるけど、内川さんはそんなに上げない。そこは違う」と、自分も持っている。
高卒4年目のキャリアで、自らを冷静に客観視し、技術的な取り組みも的確な言葉で表現できる21歳。そんな鈴木は、あの大谷翔平、藤浪晋太郎と同世代だ。「交流戦で大谷のバッティング練習を見て、改めてすごいと思った」という鈴木は、2人を「雲の上の存在」と話す。それでも「いつかは追いつきたいと思っている」と言うその日は、そう遠くないはずだ。そしてその鈴木の活躍がチームにもたらすものが、チーム25年ぶりの悲願となることを、期待せずにはいられない。
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大久保泰伸●文 text by Yasunobu Okubo