キューバ亡命のマ軍急逝右腕が残した言葉「自由が本当に意味すること」

球団社長「彼の歩んだ人生は、希望を象徴するストーリーだった」

 右ひじ靱帯再建手術から復帰した2015年、先発日にマウンドへ上がる時の曲はWiz Khalifaの「See You Again」を使った。映画「ワイルド・スピード SKY MISSION」の主題歌でもあったこの曲は、同作に出演しながらクランクアップ前に自動車事故で亡くなった俳優ポール・ウォーカーに対するトリビュートの思いを込めて作られたもの。先に逝った親友に対して「次に会う時、これからくぐり抜けることや家族のこと、いろいろ話するよ」と語りかける歌詞なのが、今となっては切ない。

 今季は16勝8敗、防御率2.86、253奪三振という圧倒的なパフォーマンスを見せていたフェルナンデスは、努力と勇気で自分の夢を実現させた見本であり、アメリカンドリームを体現した人物でもあった。サムソン球団社長は「ホゼはこの国で野球をするために、3度(亡命に失敗して)捕まっている。野球に対する愛、情熱、リスペクトはもちろん、チームやチームメイト、家族に対する愛情は絶大だ。彼の歩んだ人生は、希望を象徴するストーリーだった。誰1人として彼のストーリーを風化させることはない」と力を込めて語った。

 球団社長には、もう1つ忘れられない言葉があるという。フェルナンデスは「生まれながらにして自由だったあなた達には、自由が本当に意味することが何かは分からない」と繰り返し言ったそうだ。そう語りかけるフェルナンデスの姿を思い出したのか、球団社長は「自由を手に入れるために戦う彼らの気持ちは、私たちには到底理解できないものだ」と涙をぬぐいながら言った。

 母国を離れて自由の国・アメリカに腰を据えた右腕は、昨年念願の市民権を手に入れた。長年付き合った彼女は現在妊娠中で、近々かわいい女の子を両腕に抱く予定だった。ようやくつかんだ自由。これから始まる家族生活。やはり、その死は早過ぎた。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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