戦力外、現役引退からコーチへ 元捕手が目指す「選手に寄り添う」指導とは
「人間観察から始まり、人間観察に終わる」―
現在も選手自身に考えさせる指導をしている佐々木監督。「それは星さんの時もですか?」と尋ねると、「そうだよ。幹はどうした、幹は? 枝ばっかりだ~」と佐々木監督の口調と声を、身振りを交えて真似てくれた。
「そういうことを言われた時、どういうことなんだろう? って考えるじゃないですか。あ、幹って大事なんだ、基本なんだって。自分で考えるようになると楽しくなるし、こうしよう、ああしようという動きが出てくる。高校時代にそういうことを経験したので、自分も見習っていきたいなと思っています」
自身の知識を深め、恩師から学んだ指導者としての姿勢を体現していきたいと考えている。その一方で、プロ通算12年で試合出場は138試合。その実績に「僕自身がパッとした活躍を残せないまま引退してしまったので、他のコーチに比べると言葉に重みがありません」と客観的に評価する。
「偉そうなことは言えないので選手に寄り添って、相談しやすい、近いところで気付けてあげられる存在になりたいですね。人間観察から始まり、人間観察に終わるのかな、と。パッと聞かれた時に的確というか、選手が納得するようなアドバイスを送っていきたいですね」
1軍で華々しい活躍をする選手がいる一方で、プロ野球選手になるという夢を叶えながらもその舞台を目指しもがき苦しむ選手もいる。星氏は自身の経験とこれからの学びの中で、そんな選手とともに闘い、彼らの道を照らすコーチになるだろう。
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高橋昌江●文 text by Masae Takahashi