“不器用を自認する男”DeNA筒香嘉智、知られざる進化の裏側・前編
筒香が中学時代から毎日欠かさない日課とは…
今オフに過ごす自主トレの毎日は、まず矢田氏の教えるエクササイズから始まる。治療家の矢田氏は、患者が訴える痛みに対して、症状を取り除いたり緩和する対症療法ではなく、痛みの原因を探り根本から改善することを目指す。同時に、「病は気から」という言葉もある通り、身体と心の関連性にも注目。人間の身体が秘める能力を最大限に発揮するための研究や指導を行っている。
人間の身体が秘める能力を最大限に発揮するための研究や指導を行っている、治療家の矢田修一氏【写真:編集部】
中学時代に出会った矢田氏が教えるエクササイズは、高校時代はもちろんプロ8年目を迎える今も、毎日欠かさない日課になっている。ストレッチをしたり、ブリッジをしたり、三点倒立をしたり。一見すると野球には直結しないエクササイズに見えるが、額に汗をにじませながら、オフシーズンは毎日最低2時間、時には丸1日を割く日もある。
エクササイズを通じて目指すのは「自由な動きができる身体作り」だ。野球は身体の左右どちらか一方に強い負担の掛かるスポーツだ。そのため、野球に関する動きだけを繰り返し練習しても、偏った動きしかできなくなってしまう。「(野球で)起こりうる局面を想定して、いっぱい動きを覚えました、というのが一般的な考え方。でも、それだと似ている局面はあっても、まったく同じということはない。対応できなかった時に『何でうまくできないの?』となりますよね」と、矢田氏は話す。
「だったら、想定外の方向まで、どんなことにも反応できる自由に動く身体を作ればいい。例えば、『野球の常識で言ったら、こういう打ち方しかない』と囚われてしまったら、それはできたとしても、それ以外のことはできませんよね。何にでも反応できる自由に動く身体とは、つまり思い通りになる身体。“思い”は心だから、頭で考えることとは違います。考えて動くのではなく、思いのまま自然に動く。
理想は、打席に立った時、向かってきたボールに対して、何も意識しなくても身体が反応することです。打つという目的に応じて、身体の動きを“間”に合わすことができる。考えて動くと“間”に合わないんですね。そのちょっとした誤差が、打席では絶対的なミスにつながる。“間”に合う自由な身体を作るために、エクササイズを通じて、野球では想定外の動きまでやってるんです」