「足が速いだけではダメ」― 元G鈴木尚広が語る「いい走者」の条件とは

“走塁のスペシャリスト”が考える「いい走者」の共通点とは…

――鈴木さんが考える「いい走者」の共通点は何でしょう。

「足が速いのは必須条件です。でも、足が速いだけではダメ。いいランナーは判断力に長けています」

――判断力、ですか。

「例えば、打球方向は走塁に大きく関わってくる。一言で“打球”って言っても、パワー系なのか、単打が多いのか、三振が多いのか、打者によって変わるし、ピッチャーが投げる球種によっても変わる。キャッチャーの構える場所でも、次に投げる球種は限られます。そういった情報を基に、どう判断するか。

 僕はいつも『この打者はバットをどういう風に構えているな』とか『このコースに行ったら、こう打つな』とか、そういった情報を自分なりに集めていました。情報が頭に入っていると、いいスタートが切りやすくなる。よく『打球で判断しろ』って言いますが、実は打った球に反応するのでは遅い。自分で仕入れた情報を基に、相手の守備位置を合わせて考えると、ある程度、打球が飛ぶ方向は絞られてくるんですよね。いいスタートが切れる確率が高まるわけです。

 自分で情報を持っていると、不安要素がなくなるし、落ち着いたプレーができるようになる。周りが見えるようになるんです。そうすると、一塁走者として目が投手の方を向いていても、後ろの動きが見えることがある。外野の守備位置をしっかり把握していれば、打球が飛んだ瞬間にどんな動きをするか分かるようになる。これは絶対に練習で培われていきます」

――走塁の魅力を世に広めていく役割。これからが楽しみですね。

「またイチから、いやゼロから作り上げていくわけですよね。そういった意味では、いろんな感情が入り交じってますけど、今までとは違った自分が成長することになる。野球選手としての成長は“第一幕”として終えたので、今度はその経験を人に伝えたり、野球界に還元しながら、自分の成長を感じていきたいです。最初からうまくいくなんて思ってません。これもまた積み重ねで」

――盗塁と同じですね。

「盗塁を積み上げた20年のように、これからも積み上げていければいいと思います。自分が動き出せば、その先には何か生まれるわけですから。野球界に関わらず、広くスポーツ界にも何かを還元できればいいなと思います」

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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