柔らかくあれ― 伸び悩むロッテ25歳野手を変えた結婚式、指揮官の主賓挨拶
「一流になるか、一流半に終わるかはちょっとした違い」…伊東監督が伝えたかったもの
自然と背筋が伸びた。昨年12月。マリーンズの加藤翔平外野手は都内で結婚披露宴を行った。主賓挨拶はかねてより伊東勤監督にお願いをしていた。壇上に上がり、スピーチが始まると汗がとまらなくなった。指揮官の言葉を脳裏で何度も反芻した。
「もっと柔らかくなって欲しい。柔軟に物事に取り組んでくれたらと思います。体も柔らかさが欲しいですね。今、巷には体を柔らかくするベストセラー本なども出ていますので、ぜひ買って読んでください」
柔らかくあれ。指揮官は披露宴のスピーチというお祝いの場で、あえて簡潔にユーモアも交えながら背番号「65」の課題を口にした。ゆっくりと丁寧に加藤の目を見ながら話しかけるように熱く想いを伝えた。メッセージは考え方の部分と、肉体的な部分の両方を指していた。プロ初出場試合でのプロ初打席の初球を本塁打にするという衝撃的で華やかなデビューを飾りながらも、その後はどこか伸び悩む若者の姿を指揮官は歯がゆく思っていた。そして、メッセージを受け取った加藤もまた、その言葉の意味をハッキリと理解した。結婚式で突きつけられたメッセージを胸に刻んだ。
「本当にありがたかったです。期待をしていただいているからこそ、そういう風に叱咤激励をしていただいたと思っています。期待に応えられるよう、いや、期待以上の結果を出さないといけないと強く決意しました」
結婚式の翌日、さっそく本屋に足を運んだ。まずは体を柔らかくする本を買い込み、読み漁った。ストレッチ用のマットも購入し、実践した。人並み外れた身体能力と肉体を持ちながらも、関節などが硬い事は小さい時からの課題だった。それはアマチュア時代からも何度も指摘されていたが、なかなか克服できずにここまできた。プロ5年目、指揮官の檄を大きなターニングポイントにしないといけないと肉体改造に取り組んだ。