「代われ」― 日本一8度のロッテ監督、原点にある1年目の「ブルペン1球交代」
日本シリーズが「新しい時代の幕開け」に―「勝つことで選手たちは強くなる」
後楽園で行われたこの4戦目は7-4で勝利し、2勝2敗の五分に戻すと、第7戦までもつれた試合に3-2で勝利し、ライオンズは日本一に輝く。そして伊東監督もまた、4戦目から7戦目までスタメンマスクをかぶり続け、歓喜の瞬間をグラウンドで味わうことになった。そのときは、ただ夢中で必死だった。ただ、今、冷静に振り返ると、この時がまさに分岐点。翌年に113試合に出場し、正捕手の座を射止めると、引退をする03年まで試合に出続けた。ライオンズ黄金時代の正捕手が誕生した瞬間だった。
「あの時、シリーズに出て日本一になれたことで精神的に強くなった。ジャイアンツを倒したことで、新しい時代の幕開けがあの時から始まったように感じる」
ZOZOマリンスタジアム。指揮官が遠い昔を振り返る目の前では、マリーンズの若手選手たちが打撃練習を繰り返していた。競争意識と自分の限界を決めずにプレーをする姿勢を求めている2017年。キャンプからの若手のアピールには一定の満足感を感じている。ここから、必要なのは試合の中で自信をつかむこと。それは、自身が83年の日本シリーズでつかんだ感覚のようなものだろう。
「よく負けて覚えることがあるというけど、オレは勝って覚えることが沢山あると思う。勝つことで選手たちは強くなる。勝つ事の大事さを知り、負けたくないと思う。もっともっと勝ちたい、いい思いをしたいと思う。オレはそうだった。そういう気持ちを若い連中に経験をさせてやりたい」
マリーンズはオープン戦で勝利を重ね、投打ともに順調な仕上がりであることを証明している。3月31日、福岡から始まる新たなシーズン。指揮官はリーグ優勝、日本一を目指す。美酒を知らない若い選手が多いチームに勝利の味を伝えたいと思っている。そこから自身が歩んだような栄光の常勝軍団への道が見えてくる。殿堂入りを果たした指揮官だからこそ知る想いが、そこにはある。
(記事提供:パ・リーグ インサイト)
【了】
マリーンズ球団広報 梶原紀章●文 text by Noriaki Kajiwara