プエルトリコ・モリーナ「世界一の視野」で好戦演出 放心バレの肩を抱く

激昂バレ三振斬りもガッツポーズ堪える…昨年はイチローへ粋な計らいで話題に

 執念がぶつかり合っても、ただ一人、冷静だった。延長10回1死。打者・バレンティンに対し、右腕ディアスが投げ込んだ158キロ直球が顔面付近を通過。バレンティンが激昂し、マウンドに向かおうとすると、すぐさま間に割って入った。両軍がベンチから飛び出したが、乱闘に至ることなくとどめていた。

 そして、バレンティンが見逃し三振に倒れた瞬間、モリーナはガッツポーズを作りかけ、ぐっとこらえるように上げかけた右手を下ろした。試合がこれ以上荒れないよう、瞬時に計算したのだろう。心中穏やかでないバレンティンの肩を試合後に抱いたのも、一つの気遣いだった。

 米紙「USAトゥデー」のボブ・ナイチンゲール記者は自身のツイッターで、ディアスとバレンティンが対戦したシーンをこの日「最大の見所」と伝え、顔面付近の投球に対して激高したバレンティンをモリーナがなだめたことも紹介した。

 昨年7月、マーリンズのイチローが米3000本安打に残り9本とした試合では、イチローが打席に入り、場内から拍手が沸き起こると、モリーナはわざと立ち上がり、プレートの前の土を払うようなしぐさを見せ、ゆっくりと戻った。

 名手の一連の動作は、観衆がイチローに十分な喝采を送るだけの時間を作るためのもの。粋な計らいで感動を呼び、その後の試合では「イチローを尊敬している。彼はアメージングな野球選手。人間的に素晴らしく、偉大な選手」と話していたが、注目の舞台で再び、名シーンの“助演男優”となった。

 この日の延長11回のタイブレイクでは、きっちりとバントを決め、サヨナラ劇を演出していた。試合後は米メディアの取材には応えず、足早に球場を去ったモリーナ。その視線は、すでに2大会連続の決勝、そして初の世界一しか見ていない。

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フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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